今度はクリームヒルデが反撃に出る。
反撃と言っても右足でがむしゃらに蹴ろうとしているだけだが。
そんな右ローキックを予備動作の段階で判断し、左足をすねの部分に突き出して押さえ付ける。
これだけでキックは防げる、簡単だろ?
「ぐぅっ……!」
確かに脛を蹴るのは防具越しでも痛かったか。
だがなクリームちゃん、戦うって、痛いんだよ。
そのまま続けざまに彼女の腹を蹴り付け、弾き飛ばす。
「ぐふぅぐッ……」
1メートルほど後ろへ吹っ飛んだクリームヒルデは背中から地面に着くと、後方へ回転して衝撃を和らげる……それだけじゃない、無意識の内に蹴られた時に身体を後ろへそらして衝撃を逃がしやがった。
センスは本当にいいんだな、この子。
俺も一旦引いて体勢を立て直す。
何も攻撃し続ける事だけが戦いの術じゃない。
気が付いたら相手の術中にはまっていたなんて事、よくある話だ。
クリームヒルデは瞬時に深呼吸すると、今度は突きの構えを見せて突撃してくる。
だが普通の突撃じゃないぞ、このスピードは。
恐らく今の深呼吸が魔法の呪文だったに違いない、加速が人間離れしてやがる。
「……!」
少し驚きながらも、俺は突きを見切る。
胸の真ん中を狙った攻撃のようだ。
俺が身体をほんのわずかそらすと、クリームヒルデの長剣は俺の脇の下を通って行った。
そのまま、俺は脇を締めて長剣を身体で挟み込む。
この長剣は方刃で、現在刃は下を向いているために斬られる心配は無いのだ。
「ふざけ……」
クリームヒルデが何か言う前に、俺の頭突きが彼女の頭に入った。
さすがに顔は汚さない、紳士だもの。