――お兄ちゃん、お兄ちゃん、起きてよ――
懐かしい声がする。
聞いているだけで心が洗われるような声……起きてと言われても延々と眠り続けていたくなるような声。
いつだったか、俺はこの声の為に日々を生きていた。
――今起きるよ。朝ごはん作らなくちゃな……その前にお祈りだ――
目を閉じたまま、呟く。
あぁ、このままずっと、こんな心地よい時間が続けば良いのになぁ。
そうしたら俺も、お前も、こんな物を持たずに生きていけるのに。
目を開けると、俺の腕にはAKが握られている。
そして儚い笑顔を見せる『彼女』の手には血にまみれた斧とナイフが握られていた。
――あぁ、やっぱり駄目なんだな。
一人、心の中で呟く。
俺には心地よい時間なんてあっちゃいけないんだ。
よく分かった。
不意に武装した、柄の悪いアメリカ人が沢山出てくる。
――俺にはこういう生き方以外無いんだろうな。
俺はAKのアイアンサイトでそいつらを狙う。
――どこまで続ければいいんだろう。
トリガーを引く。
AKが金切り声を上げてそいつらの頭を弾き飛ばしていく。
ずっと、続いていく。
誰かが消えて、最後まで自分が生き残っても、こうやって新しい誰かを撃ち続ける日常が。
ずっと。