小説『ロリコン勇者のファンタジー』
作者:Ciel(Eエブリスタ、ふらん(Ciel)のページ)

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部屋の真上――今居るフロアにある空き部屋だ――に来ると、俺は窓を開いて下を見る。
大分高いが、まぁワイヤーの長さは問題ないだろう。
よし、後はラペリング――特殊部隊さながらの垂直降下をしてみせればいいだけだ。
まぁ、なんだ……やった事無いけど。

「クソ、高ぇなオイ……」

高所恐怖症ではないが、一歩間違えればあの世行きになる事は間違いない。
ウルフィアス戦の時に発現した翼があればなぁと思いつつ、俺はワイヤーをタンスや机に巻き付けてしっかりと固定する。
大丈夫だ、絶対落ちない絶対落ちない、うん大丈夫。

軍用の厚手の手袋をはめ、一歩足を窓の外に出して様子を確認する。
ヒュウゥウウウウウ、っと高い所特有の風の音がする、うわヤバイ高い。

昔シェパードとジェットコースターに乗った事があるが、一番高い所まで登りきった時と同じ感覚がする。
いや、それ以上か。

ぐいっと念のためにワイヤーを引っ張る。
それでもびくともしないので、俺はとうとう身体を窓の外に乗り出すようにした。

足に力を入れて体勢を維持する。
ここで手の力は抜いてはいけない、するりと俺の身体が地面へぶつかる事になるからだ。

「Let's do this!!!(やってやるッ!)」

気合いを入れて降下を始める。
手始めに手の力を緩め、ブレーキの効果を弱める。

慎重に、臆病なくらいゆっくりとだ。


すると、1メートルだけ降りて大体の感覚が掴めたので今度は思い切ってもっと力を緩める事にした。


が、


ビュウゥウウウウウウ!!!!!!

突然、突風が吹いて手を離してしまいそうになる。


「ヤッバァアアアアアアアアイ」


野太い声を出して急ぎブレーキを掛ける。
摩擦で手袋がちょっと熱いがなんとか落下は止まった。

思わず安堵のため息が漏れる。
クソ、ゲームだと簡単そうなのに……!

調子に乗って緩めすぎた、俺は確実に降りる事だけを考えて降下を続けた。

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