「ふぅ……疲れたな、今日は」
とりあえずはマリアを王族親衛隊に任せ、引き上げてきた。
親衛隊は相当信用できるらしいので任せても大丈夫だろう、とウルフィアスは言っていた。
正直今は誰が牙を王族に向けても不思議じゃないが、仕方ないだろう。
俺は風呂にも入らずにベッドへ仰向けに倒れる。
ライトに腕を伸ばして、いつの間にかゴツゴツと皮膚が堅くなった掌を見つめる。
ここ最近、よく人を殺す。 俺も一歩間違えればあの世行きなのだが。
この掌のゴツゴツ感は銃を握り締るたびに増していく。
そう、人を殺しに行くたびに増していくのだ。
この世界で盗賊を殺した時、最初はちょっとだけ手が震えた。
だがそれも二人目を殺す時には止まっていた。 それどころか、アドレナリンが湧き出ていた。
戦うと、気持が高揚する。
盗賊から村を救った時も、庭園で模擬戦した時も、ミカを助けた時も、さっきマリアを助けた時も。
俺は戦いを楽しんでいたのかもしれない。
「どんどん汚れてくるなぁ、ミカ」
いつの間にか、鏡の前で髪をとかしているミカに話しかける。
「変態って意味じゃ汚れまくってるでしょ」
「まぁごもっともですね、ってオイ」
ミカには心が見えているはずだ。
そうであっても、こうやってボケてくれる。
そこがミカの良い所。