――沈みゆく太陽を背に、一人、小学校近くの坂を登る。
最後にシェパードとこの坂を歩いたのは高校の時だったか。
俺は表情を変えずに携帯電話をいじる。
数秒いじった後、画面には送金完了、とだけが表示されていた。
「あら、お金は全部あの娘にあげちゃうんですね」
不意に、何処からか舞い降りたミカが手元を覗く。
俺はささっとしまうと頷いて見せた。
「もう俺には必要ねぇからな。異世界で日本札やドル札は使えねぇだろ?」
「そりゃそうです、金は別ですけど」
「ジンバブエドルは?」
「焚き火にも使えなさそうですね」
俺のジョークにも冷静に対応してくれるミカたんマジ天使。
と、まぁこんな感じでしばらく坂を歩く。
すると見覚えのある景色が入って来た。
「あら、そういえば貴方最初にここで幼女を監視してましたね」
「違う観察だ、監視じゃない」
俺は断じて犯罪を犯さない。
Yesロリータ、Noタッチだぜ。
ただしミカは除く。
俺とミカは立ち止り、坂の上からかすかに見える夕日に彩られた富士山を見つめた。
ふぅ、と思わずため息が出る。
こんなにきれいな富士の山を見たのは何年振りだろうか。
昔を思い出す。
「……昔さ、いろいろあって外国にいたんだけどよ。日本に帰ってきてすぐ、シェパードがここに連れてきてくれたんだ」