『解放』
その後のアスラの生活と言えばもっぱらトレーニングと懸賞金が付いた海賊に対しての実戦である。
海賊たちや海軍でも懸賞金が高いものを倒していくアスラは噂になっていた。
この世界に転生して五年がたち、それなりに実力が付いたんじゃないかと、自身では思っていた。
自分がどこまで通用するのかを確認するためにシャボンディ諸島へと向かった。
ここまでのグランドラインを通り、実力をつけた者たちが集まる場所でアスラは自分がどこまでできるのかを知る為と、集団に対する戦闘を学ぼうと高額な懸賞金を持った者たちが集まる。
数日かけて到着したアスラは島にいる海賊を調べるために歩き回った。
億クラスの者が二名ほどおり、アスラはその者達を優先的に狙っていった。
「砲突き!」
「ぎゃぁぁぁ!」
「お、お頭がやられた。に、逃げろォォォ!」
アスラがトレーニングをして分かったことは、刺し穿つ死棘の槍ことゲイ・ボルグはFate作品の宝具のような効力は失っていること、投擲の効果も失っているがあくまでも宝具として失っているだけであり、当然槍である為、投擲としても期待ができる。
ましてや現在の容姿はケルトの英雄ディルムッドである。クー・フーリンほどではないが投擲の才は十分にあった。容姿は作品に合わせたようだが、中身は神話上に生きた力だった。
「閃槍!」
「た、助けてくれぇぇぇ!」
よって、トレーニングの効率は十分だった。
「さて、こんなもんかな」
億クラスの敵を難なく倒したアスラは海軍から二人分の賞金を受け取りどうしようか考えていた。
そこへ天竜人が通るようで人々は道を空けて両膝をついて天竜人の通過を待った。
アスラもそれにならって何事もなかったように済まそうとするが、災難が起きた。
その天竜人は女だった。女はアスラを見るや自分の物にしようとした。
ここで抵抗するの危険と判断したアスラは大人しく従った。その際に槍を取り上げられそうになったが、
「あなたを守るために使いたい」
などと自分らしくないことを言って了承を得たのだった。アスラはこれを黒歴史としているが。
聖地マリージョアに着くや否や事件が発生した。
奴隷が次々に解放されているという。
これを受けてアスラは今がフィッシャー・タイガーによる奴隷解放だと理解した。
アスラを連れてきた女が守れとうるさかったが、武器を携帯させてくれた礼があるとして安全な場所まで連れて行った。どこまでも甘いアスラである。
その後フィッシャー・タイガーを発見し
「おいあんた」
「なんだ貴様は」
「俺はアスラ、あんたがやろうとしていることを手伝おうと思ってな」
「勝手にしろ」
(やっぱり人間が嫌いみたいだな)
「まぁ勝手にやるさ、でも悪いんだけどさ、みんなが逃げられるように船か何か用意してくれないか、その間にまだ助けてない奴らがいるかもしれないし」
「…………分かった。シャボンディ諸島に行く方法があるんだそれなりにいい船があるだろう」
「よろしく」
アスラはタイガーと別れ、いまだ捕まっている者たちがいないか探していた。
道中捕まっていたと思われる海賊が天竜人や護衛の兵士たちを殺していたが、仕方がないとアスラは割り切った。
もう誰もいないかと思っていたが、
「ええい! 奴隷の分際で!」
という声を聞き、急いで声のした方へと走った。
声がした方を見ると、天竜人の男が三人組の少女へ銃を向けているのが分かった。
「ちっ! 閃槍!」
右手に持っていたゲイ・ボルグを男に向って躊躇することもなく投擲した。
悲鳴を上げることなく右脇に刺さり、勢いが死なず、そばの建物まで飛ばされ絶命した。
「大丈夫か?」
「は、はい……」
(ハンコックたちか……悪魔の実を食わされたんじゃなかったけ? まぁ使うことはできなかっただろうししょうがないか)
「船を用意してある。急ごう」
三人を連れてアスラは脱出するために走り出す。
「そうはさせん」
「っ!?」
気が付いた時にはアスラは吹き飛ばされていた。
「がはっ!」
「ずいぶん派手にやってくれたな」
アスラを殴った男が若干怒りをあらわにしていた。
「はっ、黙認することしかできないてめぇらには言われたくないな」
「だ、大丈―」
少女ハンコックがアスラに近づくが、
「逃げろ」
「えっ?」
「早く逃げろ、そんで二度と捕まるなよ、あと、フィッシャー・タイガーて奴がいたら俺のことは気にせず行けと伝えてくれ。さぁ、行け!」
「…………」
三人は無言で頷き、走って行った。
「逃げないのか?」
男が訪ねる。
「逃げる? あんたが逃がしてくれるわけないだろ」
アスラは立ち上がり、槍を両手で持って男を睨む。
「違うか? 海軍本部大将仏のセンゴクさんよ」