『大仏』
「ほう、私の名前を知っているのか」
「あんたは有名人だからな」
「ふっ、ならば話は早い、お前を確保する」
「嫌だと言ったら？」
「実力行使だ」
センゴクは体を膨張させ巨大化を始めた。
「能力者か」
（まぁ知ってんだけどな、ここは知らないふりでもするか）
「動物系幻獣種、ヒトヒトの実モデル大仏だ」
右掌をアスラに向けるセンゴクに疑問に思ったが、咄嗟にどのような攻撃をす
るのかを思い出し、回避行動をとるが、間に合わなかった。
放たれた衝撃波が当たりアスラは吹き飛ばされてしまった。
能力者の攻撃に対して耐性が付いているとはいえ、怪我はする。
「強烈だな。今までで一番痛い」
ここはさすが海軍大将と言うべきか強力な力だったようで、アスラがいた周囲
にあった建物は消し飛んでいた。
「けど、さすがに今捕まるわけにはいかねぇ、せめてルフィたちと冒険はした
い」
槍を杖代わりにして立ち上がる。
「ほう、まだ立つか」
「当然！」
アスラはセンゴクに向かって走り出す。
センゴクは落ち着いた様子でもう一度衝撃波を放つ。
「二度目はごめんだ！」
跳躍し、巨大化したセンゴクの目線ほどに飛んだアスラは、
「閃槍！」
槍をセンゴクへ向けて投擲した。
何もない攻撃だと思い込んだセンゴクは槍を左手で払い、空中にいるアスラを
攻撃しようとしたが、
「ぐっ（攻撃を受けただと！？）」
痛みを覚え、攻撃を中断してしまった。
「馬鹿な槍は払ったはず、今の攻撃で私が傷つくわけが……」
動揺は隙を産む。
すかさずアスラは槍を回収し、センゴクの懐へと近づく。
「っ！！ しまっ―」
「破突き！」
「ぬおぉぉ！」
センゴクも伊達に大将はやっていない。下から上へと突いてくるアスラの攻撃
を受けながらも、右手から衝撃波を出し、アスラを吹き飛ばしていた。
右腹部から左の肩まで浅い傷ではあるが出血をした。
「くっ、ここまでの傷を負ったのはシキ以来だな……だがこれで―」
「終わりなわけないだろ」
「っ！！ まだ立つか」
「二度も言わせるな、当然だ！」
再びアスラはセンゴクへ向かって走り出す。
「懲りない男だ」
衝撃波を放とうと右手をアスラに向ける。
「閃槍！」
その右手に向けて槍を投擲する。
「はっ！」
衝撃波を放ったセンゴクは槍を吹き飛ばしたと思っていたが、またもや結果は
違った。
「ぐっ！」
今度ははっきりと右手にアスラの槍が刺さっていた。右手の人差し指と中指の
間に深々と刺さっていた。
怯んだセンゴクに近づいたアスラは槍を抜き、続けて攻撃を行う。
「はっ！」
しかし、相手はセンゴク、そう何度も容易くは攻撃は受けない。
しっかりと回避行動をし、アスラと距離を取る。
その時に右肩を切られてしまうが。
（おかしい、なぜ完璧に避けているはずなのに奴の攻撃が当たるんだ……能力
者か？ いや、覇気か……）
「おい、センゴク」
「……なんだ」
「なんであんた一人なんだ？ 海兵は連れてこなかったのか？」
「……来てはいる」
「来ているのにここにはいない……まさか奴隷たちを捕まえようなんて思って
ないよな？」
「……」
「ちっ、結局は正義を語ったただの悪人だったわけだ」
「貴様っ！」
「さっき俺といた少女たちは女ヶ島の者だぞ？」
「なにっ！」
「女帝さんが怒って海軍本部に来ないといいな」
もちろん原作の知識であるし、彼女たちが戻って来てからどのようなことが起
きたのかはアスラは知らない。当時の女帝が激怒したのか、それとも帰って来
てくれたことを素直に喜んだだけなのか、作品内で書かれていないことなので
アスラは知らない。
「黙認なんかしちゃってさ、仁義と言う名の正義だっけ？ 反吐が出る」
アスラはそれだけ言ってセンゴクに背を向ける。
「じゃあな、この勝負は俺の勝ちと言うことで」
「ま、待て！」
「そういわれて素直に待つと思うか？ 次は心臓を狙うぞ」
「くっ……」
アスラはそのまま去って行った。
センゴクに至っては久しぶりの敗北であった。
その後、逃げ遅れた者（略奪をしていた海賊たち）が海軍と戦っているのを発
見、海賊と協力して撃退。無事に脱出する。
聖地マリージョアで起きた一連の事件が原因でアスラは危険人物として海軍に
手配された。
死槍のアスラ 懸賞金三億ベリー