小説『ペルソナ4・ザ・ゴールデン 平和を望んだ異端者』
作者:イザナギ()

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第三話 転校生は鳴上悠

めんどくさいと思いつつ学校に向かった俺。途中で股を嫌って程ぶつけた花村を見かけたが、どうしようもないし仲が良い訳でもないので心の中で合掌した後、とっとと先に行った。


そして教室へ行こう、というところで

「あ、闇討……」
「闇討くん」

里中と天城に会っちまった。
神様、もしいるのなら、どれだけ俺のことが嫌いなんだ。

「……」
「…………」
「………………」

ち、沈黙が痛い。あっちが悪いってわかってはいるけど、手を出しそうになり、怖がらせたのも事実なわけで。ちょっと悩む。

「ごめん……」
「は? なんだいきなり?」
「雪子から事情を聞いたの。私、勝手に勘違いしちゃって、傷つけて、ごめん」
「千枝に応援頼んだんだけど、説明が足りなかったみたいで」

ああ、なるほど。天城が心配になって里中に連絡、説明足りず間違えて俺を襲ったってわけか。
はぁ、許してもいいんだけど、どうすっかね。
まぁどうせだしちょっとからかい半分にお願いを聞いてもらうとしよう。

「そんな言葉で許すとでも?」
「うぅ……」

罪の自覚はあるらしい。
しかし見てて罪悪感が……。耐えろ、俺!

「そうだな。ひとつ俺の言うこと、聞いてもらおう。そうしたら許す」
「言うこと聞くって、あんた何考えてるの!?」

待て、そこで何故顔を赤くする?
ていうか聞く気すらなしかよ?

「昨日からどうも首が痛いんだよなー」
「うっ!」
「どうしてだったかなー、誰のせいだったかなー」
「わ、わかったわよ!言ってみなさいよ。はぁ」

ちょっとわざとらしかったかもしれないが。実はちょっとした切実なお願いがあるんだ。

「よし、あ、天城も連帯責任な」
「え?」
「ちょ、どうして雪子を!?関係ないじゃん!」
「天城がちゃんと連絡してればよかったじゃないか」
「……わかった」
「え、雪子!?」
「元々私が原因だし、それに…………」
「あ、そういえば雪子……」

なんかよくわからんが……まぁいいか。
それに、の後が気になるが気にしないことにしよう。

「よし、これからお前らは……」
「う、うん」
「な。なに?」
「闇討、じゃなく名前で呼べ」

沈黙が訪れた。例えるなら、ザ・ワールドみたいな感じ。……タイミングミスったか?
け、けどさ、名字で呼ばれるとどうしても家のことを思い出しちまって嫌なんだよな、切実に。

「ふふふふふふふふふふ」
「くすくすくすくすくす」

突然笑い出す二人、怖いから。

「なるほど、雪子の言うとおりだね」
「そうでしょ、面白い人だからね。護君は」
「うわ、すんなり言えちゃうんだ」
「? なにかおかしい?」
「いや、いいんだけど」
「楽しそうに会話してるが時間わかってる?」
「あ、ごめん。えっと、その、ま、護」

そんなどもるほどいやなのか?
そう思いつつ、自分のクラスへと向かったのだった。


「この世に神はいないんだ……」
「なにいってるの?」
「だってこのクラスの担任モロキンの野郎だぜ?最悪だ。しかも俺前のほうの席だぞ?」

具体的には天城の隣。二つ後ろには花村が座って……いや、死んでいる。(男にしかわからない苦痛的な意味で)

「あー、大変だね」
「言ってることはわかるが、頭硬すぎんだよあの野郎」

などと会話していると、窓側のほうから声が聞こえてきた。
どうも転校生が来るらしい。しかも都会から。
……都会にゃあんまいい思い出ないんだよなぁ。
あ?そういえば花村が苦しんでたとき見かけない奴がいたような。

「都会から転校生って、前の花村みたいじゃん」

里中はそういって花村のほうを見る。

「あれ? 朝からなに死んでんの?」
「や、ちょっと……頼むからちょっとほっといたげて…」
「……花村のやつ、どしたの?」
「さぁ?」
「男にしかわからない痛みってもんがあるんだよ。あんま深く追求すんな」

と、話しているとモロキンが入ってきた。
朝見た生徒を連れて。やっぱりあいつか。

「静かにしろー!」

と、クラスが静かになる。というのも、モロキンのいうことを聞かないと糞長い説教を聞かされる羽目になるからだ。

「今日から貴様らの担任になる諸岡だ!いいか、春だからって恋愛だ、異性交遊だと浮ついてるんじゃないぞ。ワシの目の黒いうちは、貴様らには特に清く正しい学生生活を送ってもらうからな!」

自分に妻がいないからってそういうのはやめてもらいたいなー、なんて反抗したくなる。
いや、逆らわないけどな?俺にも彼女なんていないし、てか友達もほとんどいないし。

「あー、それからね。不本意ながら転校生を紹介する」

本当に不本意そうだな!こいつ、教師には向いてないな、確実に。

「ただれた都会から、へんぴな地方都市に飛ばされてきた哀れな奴だ。いわば落ち武者だ、分かるな?女子は間違っても色目なぞ使わんように!」

……やっぱ向いてないな。生徒を馬鹿にするような奴は好かれん。
多分、いないんじゃないか?こいつの事気に入ってる奴。

「では鳴上悠。簡単に自己紹介しなさい」
「誰が落ち武者だ」

すげぇこいつ!初対面な奴らの前で、しかも担任の言うことを聞かず反論しやがった!?
こいつ、只者じゃないな。
事実、クラスのほとんどが驚いているようだ。うん、俺も驚いた。

「む…貴様の名は腐ったみかん帳に刻んでおくからな!」

なぜこちらを見ながら言うんだよおい?
と、いきなり勝手と偏見に満ちた説教が始まった。
はぁ、ちょっとそういう度胸は無いんだが、しょうがないか。

「モロ……岡先生、早く転校生さんを席に着かせて、準備をさせないと、清く正しい学校生活が送れないんじゃないですかぁ?」

やべ、モロキンって本人の目の前で言いそうになっちまった。まぁそれ以外は十分だろう。ちょっと馬鹿にしたような言い方はしょうがない。
そしてむっとして言い返そうとした瞬間里中が口を開いた。

「センセー。転校生の席ここでいいですかー?」
「あ? そうか。よし、じゃあ貴様の席はあそこだ。さっさと着席しろ!」

さて、転校生の顔も見たし、寝るか。秘技、目を開けたまま寝る。
これで眠いときは何度も乗り切ってきたんだ。

ではお休み。ちなみに、当てられたり周囲が動いたら起きられる。というか、気づいたら動いてる。
ある意味万能だよなー、と思いつつ、寝る。




「では今日のところはこれまで。明日から通常授業が始まるからな」
「先生方にお知らせします。只今より、緊急職員会議を行いますので至急、職員室までお戻りください。また、全校生徒は各自教室に戻り、指示があるまで下校しないでください」

気がつけば放課後である。しかもなんか放送流れてるし。

「うーむむ、いいか?指示があるまで教室を出るなよ」

そういってモロキンが出て行く。
と、外からサイレンが聞こえてきた。
野次馬的興奮生徒たちが窓に行く。

と、そのうちの一人が大声上げてやってくる。

「あ、あのさ、天城。ちょっと訊きたい事があるんだけど……。天城んちの旅館にさ、山野アナが泊まってるって、マジ?」

空気よめ。というか常識を考えろ。普通そういうこと、答えないだろ。
と、思いつつ本を読む。timeismane。英語は苦手だからあってるか分からんが、時は金也ってやつだ。仲も良くないやつらと話すよりよっぽど有意義だ。

「そういうの、答えられない」

ほらな。馬鹿みてーだ。こんな日常。
だが、なんだろう、気のせいか転校生徒が来るってだけで何か違う気がする。

「はー、もう何コレ。いつまでかかんのかな」
「さあね」
「放送鳴る前にソッコー帰ればとかった……」
「いや、モロキンのあと帰る暇どころがノートしまう暇すらなかったのに帰るなんて無理だろ。本を読め本を」

……小声だったからか聞こえなかったようだ。
俺も読書に集中する事にした。中々の名作のファンタジー系ストーリーだが、それが最近のお気に入りだ。
まぁ会話は聞こえてくるからとりあえず頭の片隅にでも留めておこう。
と、放送がなった。
簡単に言うと、下校して良いですよ、寄り道はしないようにしましょう、って事だ。

その後、本を丁寧にしまい、帰ろうとすると鳴上を里中と天城が誘っていた。
しょっぱなモテモテだな。

と、様子を見ていると、花村が里中に話しかけ、何か渡して……逃げた。里中が追いかけて、花村が机にぶつかった!

「どわっ!」

しかも急所ぶつけたみたいだ。う、うわー痛そうだ。流石に同情する。ちょっと近づいてみよう。

「なんで!? 信じられない!ヒビ入ってんじゃん……。あたしの成竜伝説がぁぁぁ……」

成竜伝説ってあれか?カンフー系の映画。

「お、俺のも割れそう……。つ、机の角が直に……」
「だ、大丈夫?」

流石に心配するだろ。仲の良くない俺でも同情するぞ。朝も同じ場所ぶつけてたから余計痛いだろう。

「ああ、天城、心配してくれてんのか……」
「いいよ、雪子。花村なんてほっといて帰ろ」

言うが速いか三人とも行ってしまった。
ていうか鳴上無口だなー、ほとんど喋らなかったぞ。
そして俺は花村に近づく。

「惨めだな、花村」
「んだよ、てめえにゃ関係、ない、だろうが!」
「怒るなよ、惨めな花村にいい情報持ってきてやったのに」
「うるせぇ! お前になんか頼るかよ!」
「へー、なんだ。成竜伝説を格安で売ってるトコ知ってんだけどなぁ、頼らないって言うんなら精々がんばってバイトして買ってくれ」

そして去ろうとすると、

「ちょ、おま! 知ってんの!?頼む、教えてくれ!」

凄い根性だ。まだ痛いだろうに。

「え? 俺になんか頼らないんだろ?」
「嘘ですごめんなさい助けてくれ!」
「教えない。まぁこの謎が解ければ分かるからがんばってみろ。えっとほら」

そういって紙を渡す。即行で書いたけど十分上手に書けたと思う。
内容は

十匹のネズミが歩いていると向こうから何かがやってきました。それは
ネコでした。猫はこちらを見つけるといきなり襲い掛かってきました。
すぐに逃げましたが五匹は殺されました。

である。

「はぁ? なんだよこれ」
「ちょっとひねればすぐ分かる問題だ。じゃあな」

そしてとっとと帰ろうとするのだった。


校門までやってくると、目が死んでいる男がいた。
天城を連れて行こうとしているみたいだ。詰めよっている。
はぁ、やれやれ。

「女子を無理やり連れて行くってのは、男のやる事じゃないぜ?」
「だ、誰だよお前!」
「あ、護くん」
「俺は闇討。このあたりじゃ結構有名だと思ってたが、まぁいいか。さて、天城は嫌がってるし、ここで引くならよしとしよう。だが、無理やりにでも連れて行くってんなら……ここでお前の人生は終わりだ」

そういいながらポケットからナイフをとりだし、目が死んでる男。面倒だな、目死でいいか。目死に向ける。

「く、くそっ!」

あ、逃げた。なんだよ詰まらないなぁ。

「それ、本物か?」
「あ、無口転校生。本物かどうか、試してみるか?」

そういって躊躇い無く持っているナイフを鳴上の胸に刺した。

「ちょ、護くん!?」
「え、さ、刺した!? 何やってんの!?」
「……んなわけなーだろ? お前らが俺の事をどう見てるか、よーーーーく、分かった」

ナイフを自分の腕にゆっくりと当てる。と、刃の部分が引っ込む。

「マジックナイフに決まってんだろ。ばーか。大体鳴上はまったく驚いてないってのに。……鳴上?」

なんか反応が無かった。どしたんだこいつ?

「いや、驚きすぎて、反応ができなかった」
「お前は勇気があるのか、ないのか、どっちなんだ?まぁいいや、じゃあな。断るときは、はっきり断るのが吉だぞー」

そういってとっとと帰る。後ろから聞こえる声は無視ってことで。

後書き
誤字脱字などがありましたら教えてください。それ以外にもこういう風にしたほうがいい、という指摘を優しく言ってくれたらありがたいです。

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