「ふぅ……お茶が美味い」
「確かに美味しいですけど……何でこんなの持ってきてるんですの?」
「企業秘密だ。俺は学生だけどな」
「何を言いたいのかさっぱりですわ」
「気にするな。おかわりは要るか?」
「いただきますわ」
「了解。流石に水道は通って無かったが、水は持参してたからお茶も淹れられるっと。準備は大事だね」
朧は何故かレイヴェルと一緒に緑茶を飲みながら、俺が創り出した敷物の上に座って二組み(主に一誠VSイザベラ)を観戦していた。
「お、イッセーの雰囲気が変わったな」
「余計な事言うからですわ」
「全くだな。戦いは黙って刃を交えればいいんだ。あ、木場の剣が折れた」
「でも新しい剣を出しましたわね。複数の神器を保持しているのでしょうか?」
「いや、あれは魔剣創造と言って魔剣を創り出す神器だな」
「それは随分と珍しいですわね」
「まあ、お前ら悪魔にとっては同じ剣を創る神器でも聖剣を創る聖剣創造の方が厄介だけどな」
「そんな物もあるのですのね」
「ま、不死鳥にとっては気をつける位でいいかもな」
一誠は能力の倍加を終了させ、イザベラに対して魔力の一撃を放った。
それは惜しくも躱され、テニスコートをまるごと消滅させた。
「あれが当たってればイザベラは戦闘不能だったな。アレを受けて無事な者はそうそう居ないだろうな」
「恐るべきは赤龍帝の籠手ですわね……」
「そうだな。――おいイッセー……何でお前はそんなにも性欲に忠実なんだ……」
「触った女の服を消し飛ばすとは……破廉恥過ぎますわ」
「武装解除と考えれば凄いんだけどな……剣とかはどうなるんだろうか?」
「やられてしまいましたわね」
「全裸で戦える者はそうは居ないからなー。そう考えると凄い技だけど……発想の元が残念すぎる」
そんな事をしている内に、フェニックス眷属が四人やって来た。
「増援か。そろそろ休憩も終わりだな。部長も動き始めたようだし」
視線を上に上げると屋上で悪魔と不死鳥(まあ、こちらも悪魔なのだが)が対峙している所だった。
「イッセー、二人よろしく。残りは俺がやるよ……っと!」
右手に槍、左手に剣を創り出し、右手の槍を『僧侶』へ投げつけ、左手の剣で『騎士』に斬りかかる。
『騎士』とは剣で切り結び、『僧侶』の魔力攻撃は創り出した飛び道具で迎撃する。
一方で一誠は『兵士』二人にタコ殴りにされてる。
「イッセーがやられる前に貴様らを倒させてもらう」
少し本気を出した朧は、最早何かも分からぬ刃物類を多数出現させて周囲を薙ぎ払う。
しかし、相手も戦闘経験が豊富なせいか、体中に傷を負ったものの、中々倒れはしなかった。
木場も相手の『騎士』を倒そうとしているが、そちらも同じく突破出来ないでいた。
そんな中、一誠は吠えた。部長を助けるため、その思いを声に乗せて叫んだ。
「俺の思いに応えてみせろ!赤龍帝の籠手ァァァ!!」
『Dragon booster second Liberation!!』
赤龍帝の籠手は音声を発すると、その形を変えていく。
手の甲にある宝玉と同じ物が腕の方にも出現し、全体的な形も前とは少し変わっていた。
一誠の脳へ、腕の方に現れた宝玉から赤龍帝の籠手のもう一つの力の情報が流れ込む。
(これなら行ける!)
「木場ぁ!お前の神器を解放しろ!」
それを聞いた木場は地面に剣を突き立てる。
「魔剣創造!」
光り輝くグラウンドに魔剣が生え、その地面に一誠は拳を叩きつけ、叫ぶ。
「赤龍帝の籠手、第二の力――『赤龍帝からの贈り物!』
『Transfer!』
赤龍帝の籠手によって増加された力が木場の魔剣を生み出す力に譲渡され、その力を引き上げる。
その結果、運動場全域には魔剣が乱立し、ライザーの下僕悪魔達はその刃に貫かれた。
『ライザー・フェニックス様の「兵士」二名、「騎士」二名、「僧侶」一名、リタイア」
アナウンスを聞いた一誠がガッツポーズを取る。
そんなイッセーに木場が少し興奮した様子で話しかける。
「イッセー君、これは……」
「ああ、俺の力をお前に譲渡して、お前を強化したんだ」
勝利の余韻に浸っていた彼らだったが、その耳に、その余韻を吹き飛ばす事が聞こえてきた。
『リアス・グレモリー様の「女王」一名、リタイア』
朱乃がやられた告げるアナウンスを聞いた二人が驚愕していると、木場の居た地点で爆発が起こり、木場もリタイアしてしまった。
「『騎士』、撃破」
木場が居なくなったため、グラウンドの魔剣が消えていく中、上空からライザーの『女王』が降りてきた。
彼女へ一誠が降りてこいと叫ぶも、彼女はそれを無視して屋上へと飛んでいった。
一誠はそれを追いかけようとするも、足に力が入らずに転倒する。
度重なる戦闘によって、一誠の体力に限界が来たのだ。
「ぬがぁぁぁぁぁっ!」
一誠は気合を入れて何とか立ち上がり、屋上へ向かおうとする。
そこへ、後ろから声がかけられた。
「まだ戦うんですの?」
レイヴェルが炎の翼を広げて空から降りてきた。
レイヴェルに色々話しかけられた一誠だが、それには耳を貸さずに屋上へ向かった。
「一人ぼっちか?不死鳥娘」
一人になったレイヴェルに、背後から声がかけられた。
「あなた……今まで何をしてらしたんですの?」
「剣から逃げようとしたらつい飛びすぎて、さっきイッセーの空けた穴に落ちて這い上がるのに時間がかかったんだよ。全く、俺まで巻き込みやがって」
現れた途端に不満を垂れ流す朧に、レイヴェルは疲れた表情をして問いかける。
「それで、あなたもお兄様の所へ行くんですの?」
「まあな。俺はあいつを痛めつける為に参戦したのに、まだその目的を完了してないからな」
そう言って朧はその場を去り、レイヴェルはまた一人その場に残された。
「私も様子くらい見に行こうかしら……」