小説『ハイスクールD×D Dragon×Dark』
作者:()

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「なんで俺がイリナと戦うことに……?」
 一誠は、自分がなぜ戦うことになっているのか解らず、首を傾げていた。

 現在、この前野球の練習をしていた場所には結界が張られ、中の様子は一般人の目には見えないようになっていた。
 しかし、一誠と木場、イリナとゼノヴィア以外は結界の外にいるので、もし一般人がいたら、美少女たち(+朧)が、並んで何かを見ているという何とも言えない光景を目撃していただろう。

 いまいちやる気が出ない一誠に、朧が近づいて話しかける。
「どうしたイッセー。アーシアを魔女と呼んだあいつらに怒りはないのか?」
「そりゃあるけど……言いたいことはほとんど言ったし……」
 そのために一誠はイリナと戦うことになったのだが。
「……しょうがない。最後の手段だ……」
 朧はボソッと呟いた後、一誠の耳元に口を寄せた。
「さあ、あいつを見ろ。刺激的な格好をしているとは思わないか?」
 イリナの体にフィットした服装を見て、一誠は頷く。
「しかも中々の美少女で、スタイルも悪くないな」
「ああ」
「彼女の裸を見たくはないのか?」
 後はもう、言葉は要らなかった。
 少し前まで一誠とは違い、全身の魔力が活性化した。つまり、一誠はやる気になった。
(この手は封じ手にしよう)
 そう思いながら朧は結界の外まで下がりながら、内心でイリナに謝罪した。

 一方の木場はやる気――というよりも、()る気満々だった。しかし、相対しているゼノヴィアは顔色一つ変えることなく、聖剣、破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)を構えていた。
「笑っているのか?」
 ゼノヴィアが木場へ訊いた。
「うん。倒したくて、壊したくて仕方なかったものが目の前にあるんだ。嬉しくてさ」
 その後もゼノヴィアは木場に対していくつかの質問をしたが、木場はそれに答えず、エクスカリバーのみに視線を向けていた。
「兵藤一誠くん」
 そんな木場を心配そうに見ていた一誠に、イリナが声をかけた。
「昔のよしみでイッセーくんって呼ばせてもらうわ」
 そう言ってからイリナは胸の前で手を組んで続ける。
「ああ、なんて運命のイタズラ! 聖剣に適正があってイギリスに渡り――(中略)――さあ、イッセー君! このエクスカリバーであなたの罪を裁いてあげるわ! アーメン!」
 涙を流しながらも、やる気に満ち溢れた瞳をしながら一誠にエクスカリバーを突きつけた。
 さすがの一誠もこれには若干引いている。聖剣を突きつけられた所為(せい)かもしれないが。

 一誠が赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を出現させると、それを見た二人が驚き、それをきっかけに戦いが始まった。
 木場とゼノヴィアは魔剣と聖剣で切り結び、一誠はイリナの聖剣をひたすら避けて能力の倍化させていく。
 一誠は相手の攻撃を避けながら、聖剣使いが相手ということもあってどこまで倍化させたものか測りかねていた。そして、『洋服崩壊(ドレス・ブレイク)』で服を弾け飛ばすと決めていた。
「いやらしい顔ね。何を考えているのかしら?」
「……気をつけてください。イッセー先輩は手で触れた女性の服を消し飛ばす力を持っています」
 まさかの味方からの秘密暴露に、一誠が思わず振り返った。
「……女性の敵。最低です」
「子猫ちゃんのツッコミが胸に痛い!」
「なんて最低な技なの!」
 そう言ってイリナは一誠を悲哀の表情で見る。
「やめろ。俺をそんな、かわいそうなものを見る目で見るなぁ!」
「性欲の塊か。まさに悪魔らしいね」
「ゴメン」
 隣で斬り合っているゼノヴィアまで非難の目を向け、それに木場が謝る始末である。一誠の尊厳はここに堕ちた。
「ゼノヴィアと言ったな。一つ訂正しておく。こいつがこうなのは人間の時からだ! 悪魔になったことはあんまり関係無い!」
「やめろ! これ以上俺を苦しめるなぁー!」
 扱いの酷さに一誠は泣きそうである。
「気を取り直して!」
 木場は炎と氷の魔剣を構え、騎士(ナイト)の特徴であるスピードを活かしてゼノヴィアに襲いかかる。
 ゼノヴィアは木場の攻撃を僅かな動きで受け流し、返す太刀で二本の魔剣を一振りで破壊する。
「私の聖剣は『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』。砕けぬ物は無い」
「……真のエクスカリバーでなくともその破壊力。七本消滅させるのは修羅の道か」
 その破壊力を見ても、木場の闘志は衰えなかった。
「こちらもそろそろ決めちゃいましょうか!」
 イリナがダッシュで近寄り、日本刀の形になっている擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)で一誠に斬りかかる。
 それを一誠は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を一度止めるか迷いながらも、その攻撃を回避する。
Boost(ブースト)!』
 四回目の倍化を告げる音声がした。
「行くぞ、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)!」
Explosion(エクスプロージョン)!』
 それを踏ん切りに一誠は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の倍化を止め、反撃に転じた。
 服を弾け飛ばせるだけの魔力を手に宿し、一誠はイリナに向かって行く。
()ぎ取り御免(ごめん)!」
 一誠はイリナの服を弾け飛ばすことだけに集中した。そのせいか、普段の一誠よりも動きが良くなっていた。その事実に外野は呆れていたが。

 ついに一誠がイリナの動きを捉え、勢いよく飛びかかったが手が触れると思った瞬間、身をかがめた。
(なん、だと……?)
 一誠はその勢いのまま結界の外で見守っていたアーシアと子猫の近くに行き――
「今のお前が女性に近づくな」
 アーシアと子猫の襟首を引いて数歩下がらせた朧に蹴り飛ばされた。
 その際に指が微かに触れたのか、アーシアと子猫の上着が弾け飛んだ。全部弾け飛ばなかったのは接触が不十分で、全ての衣服を消し飛ばすほどの魔力が服に行き渡らなかったからだろうか。
「ああもう、味方に攻撃(?)してどうする」
 朧は自分の制服のブレザーとシャツをそれぞれ子猫とアーシアに(かぶ)せる。自分は代わりに黒き御手(ダーク・クリエイト)で創った軍服調の上着を着た。
 一方の蹴り飛ばされた一誠は、いい具合に蹴りが入ったのか、地面にうずくまって悶絶していた。
「イッセーくん。私、これってあんな卑猥な技を開発した天罰だと思うの。これに()りたらあの技は封印すること。いいわね?」
 それを聞いた一誠は目を見開いて立ち上がった。
「嫌だ……魔力の才能の全てを使い込んで開発した技だぞ……」
 まさしく才能の無駄遣いである。本人にとっては無駄ではないのだろうが。
「いつか、見ただけで衣服を弾け飛ばせるように昇華するまで、俺は戦い続ける!」
 無駄にかっこよく見える台詞(セリフ)――内容はかなり格好悪い――を言って、一誠は向かってくるイリナを迎え撃ったが、攻撃が(かす)っただけで、一誠は崩れ落ちた。

 一方の木場は2mを超える巨大な魔剣を作り真っ向勝負を挑んだが、魔剣は破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)に砕かれ、腹部に柄頭を叩き込まれ敗北した。


「やれやれだ」
 結界の外で見ていた朧は、決着が着いたのを見届け、結界の内部に足を進めた。
 そして、黒い投げ縄を創り出して一誠と木場を手元に引き寄せた。
「あ痛っ」
 宙を舞った一誠と木場は地面に落ちて軽い悲鳴を上げる。
「さて、応急処置と」
 朧は黒い長手袋に包まれた手を一誠の切られた傷に当てると、出ていた煙が数秒で収まった。
「これで聖剣の影響は消えただろう。後はアーシアに見てもらえ」
「あ、ああ」
 一誠はさっきまであった何とも言えない気持ち悪さが消えていることに気づいた。
「その神器(セイクリッド・ギア)は……」
「第一級異端指定神器――『黒き御手(ダーク・クリエイト)』!」
 ゼノヴィアとイリナが朧の長手袋を見て叫ぶ。
「神の使徒が神が作った神器(セイクリッド・ギア)を異端と見なすか。人間らしくて最悪に素敵だな」
 朧はそう吐き捨てながら右手にバスタードソード、左手にレイピアを創り出し、二人に向かって走り出した。
「我ら二人と一人で戦う気か!?」
「無論」
 振り下ろされる破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)の腹をレイピアで突くことで軌道をずらす。
 空を切ったエクスカリバーは地面に激突し、土を吹き飛ばす。
「破壊力に振り回されてるようじゃ、コカビエルには届かないぜ」
 土煙を貫いて放たれた蹴りがゼノヴィアを蹴り飛ばす。
「ヤッ!」
 朧の後ろからイリナが気合の一声と共に斬りかかって来る。それを振り返ることなくバスタードソードで受け止めた。
擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を普通の剣として扱ってどうする。それの特徴は形状の変形能力。剣であって剣でないのが正しい使い道だろうが。――こんな風にな」
 右手のバスタードソードの輪郭が崩れ、不気味に(うごめ)き始める。
「ヒッ!」
 余りの不気味さにイリナが短く悲鳴を上げて飛び退(すさ)った。
 軽く()ぐように振られた、不気味に蠢くバスタードソードがイリナに(せま)る。イリナはそれをステップで回避しようとしたが、バスタードソードの剣身が伸びてイリナを吹き飛ばした。
「俺に傷一つ付けられないようじゃ、コカビエルからエクスカリバーを破壊するなんて不可能だぞ」
 立ち上がるゼノヴィアとイリナを見ながら、朧は両手の剣を手放す。剣は地面に突き刺さり、黒の粒子に変わる。
「武器を手放すとは余裕だな!」
「同時に行くわよ、ゼノヴィア!」
 左右から同時に斬りかかるゼノヴィアとイリナを見ても、朧は新たな武器を創り出さない。
「イッセー、木場、よく見ておけ。これが聖剣――それに限らず全ての剣に対する対処法の一つだ」
 振り下ろされる二本の聖剣――それは朧を切り裂くことは無かった。
「剣に触れないなら、それを持つ腕の方を止めればいい。まあ、単純な話だな」
 朧は単純と言ったが、剣と腕では間合いが違うので、それを実行するのは並大抵のことでは無い。
 しかも今は二人同時、両腕に対して片腕一本ずつ。男女の差はあれど、普通に考えれば腕力が優っているのは両腕の方だろう。しかし、今はゼノヴィアとイリナが全力で押しているのにも関わらず、拮抗しているように見えた。
「そして――」
 朧は二人の手首を掴んで合気道の要領で転ばせ、首元に創り出した剣を突きつける。
「これで終わりだ」

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