小説『ハイスクールD×D Dragon×Dark』
作者:()

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 聖剣の破壊に協力することが決まってから、俺たちはフリードをおびき出すため、神父(子猫はシスター)の格好――ゼノヴィアたちからもらった物で、魔の力を抑える働きがある――を着て、連日町を歩いていた。
 意外だったのは、匙が思いの(ほか)やる気で、成果が無くてがっかりしていたことだ。

 ある日、その努力が実を結び、フリードに襲われた。
「神父の一団にご加護あれってね!」
 フリードは上から降ってきたが、その奇襲は木場に防がれた。
「フリード!」
 フリードが来た以上、神父の格好をしている必要もないので、服を脱ぎ捨てて制服姿になる。
「神父と思いきや悪魔の一団とはね! どちらにせよ殺すだけです!」
 フリードは殺気を撒き散らしてエクスカリバーを構える。
「ああ、やだやだ。何でこんな奴と戦わなきゃいけないんだか」
「そんな事言ってる場合かよ!」
「Boost!」
 今回の俺たちの役回りは木場のサポートなので、皆後ろに下がっている。
「伸びろ、ラインよ!」
 匙の手の甲にデフォルメされた黒いトカゲ――いや、龍の顔のような物が装着され、そこから黒い(ライン)が伸びていた。
(ドラゴン系神器(セイクリッド・ギア)黒い龍脈(アブソーブション・ライン)』。ヴリトラの欠片の一つ……能力はラインで繋がれた相手の力を奪い続けること、だったか?)
 フリードがそれを聖剣で切り払おうとしたが、ラインはそれを避けて足に巻き付いた。フリードは聖剣でラインを切断しようと試みるが、聖剣はラインを通り過ぎて切断することができない。
(フリードはまだ聖剣を扱いきれてない、か)
 木場とフリードが魔剣と聖剣で斬り合うが、木場の魔剣は聖剣に何度も砕かれていく。
(作るタイプの神器(セイクリッド・ギア)で作られたものは得てして強度が低いから、これは仕方ないのだろうが……エクスカリバー、折られる前はどれだけの物だったのか……)
「木場、譲渡するか!?」
「まだやれるよ!」
 木場はイッセーからの申し出を断り、フリードへと向かって行く。
(木場め……熱くなりやがって! それでは勝てないというのに!)
 復讐に取り憑かれた木場に冷静な判断は難しいのは分かるが、聖剣は冷静さを無くして勝てる相手ではない。
「エクスカリバーに憎悪してるみたいだけど、これで斬られちゃうと悪魔くんは消滅確定だぜ!」
 そう言って振るわれたエクスカリバーは、木場が防御のために創り出した幅広の魔剣を砕き、返す刃で木場を狙う。
「子猫」
「……はい」
 俺の指示に従い、子猫がイッセーを持ち上げる。
「ちょっと!?俺は便利アイテムじゃ――」
「放て!」
「……イッセー先輩。祐斗先輩を頼みます」
 子猫の豪腕によりイッセーはもの凄い勢いで木場に飛んでいく。
「木場ぁぁぁ! 譲渡するからなぁぁぁ!」
「Transfer!」
 イッセーが木場に飛びつきながら倍加したドラゴンの力を譲渡した。
「『魔剣創造(ソード・バース)!』
 譲渡された力によって強化された木場の神器(セイクリッド・ギア)によって、地面に魔剣が乱立する。
「チィ!」
 フリードは舌打ちしながら自分に向かって伸びる刃を切断する。
 木場は魔剣の一本を手に取り、更に地に生えた魔剣をフリードに投げつけながら接近する。
 それをフリードは、先端に視認が困難になるほどの速さで聖剣を振るい、魔剣を打ち落としていく。
 周囲の魔剣を破壊したフリードは木場に向かって斬りかかり、木場の魔剣を再び打ち砕いてトドメを加えようとする。
「死・ね!」
 聖剣を防ぐ手段の無い木場に聖剣が振り下ろされた時、フリードの体勢が突如崩れた。
「やらせるか!」
 匙が足に巻き付いているラインを引っ張ったのだ。そして、ラインが淡く発光し、光はフリードから匙へと流れて行った。
「俺っちの力を吸収してるのか!?」
「これが俺の神器(セイクリッド・ギア)――」
「自分の能力をペラペラ喋るな」
 匙の声を遮る。
 相手に能力を知られているといないとでは、戦局に大きな違いが出る。特に神器(セイクリッド・ギア)はその傾向が顕著(けんちょ)だ。
「そ、そうか。木場! とにかくそいつは倒せ! そいつは危なすぎる! エクスカリバーのことはその次でいいだろう!?」
 フリードのヤバさを感じ取った匙が、木場にフリードを仕留めるように言う。
「同感だな。別に戦いの中で破壊する必要もないだろう? 持ち手を仕留めた後で聖剣を破壊すればいい。違うか、木場?」
 俺がそれに賛同すると、木場は心底悔しそうな顔をして魔剣を創り出す。
「不本意だけど、ここで君を始末した方が良さそうだ。エクスカリバーは他の二本に期待させてもらう」
「いいのかい? そいつらは俺よりも――」
「うるさい黙れ」
 フリードの発言を遮るように、創り出した黒い槍を投げる。
「木場、これ以上うだうだ言ってるようなら俺がそいつを仕留めるぞ」
 その言葉で木場が覚悟を決めた時、今までこの場にいなかった第三者から声がかけられた。
「『魔剣創造(ソード・バース)』か? 使い手の技量次第では無類の強さを発揮する神器(セイクリッド・ギア)だ」
「バルパーのじいさんか」
 神父の格好をした初老の男性を見てフリードが言った言葉に、その場に居たフリードとバルパーを除く全員が驚く。
 まさか、『聖剣計画』に関わった、木場の仇の張本人がここで現れるとは誰も予期していなかったからだ。
「フリード、何をしている」
「このトカゲくんのベロが斬れなくて逃げられねえんですよ!」
「それはお前が聖剣の力を使いきれていないからだ。お前の中の聖なる因子を聖剣の刀身に込めれば切れ味は増す」
「……フリードに聖なる因子とか……冗談キツいぜ」
 バルパーの発言を聞いてそう漏らす中、フリードが匙の神器(セイクリッド・ギア)を切断した。
「それじゃ、逃げさせてもらうぜ!」
「逃がさん」
 フリードがそう捨て台詞を吐いた時、突如現れたゼノヴィアがフリードに斬りかかった。
「やっほ、イッセー君」
 そして、イリナもやって来た。
 フリードはゼノヴィアとしばらく剣戟を続けていたが、逃走用の閃光玉を使い、イッセーたちがひるんだ隙に逃げ出した。朧はさり気なく子猫の前に立ち、自分だけサングラスを着けて視界を守っていた。
 それを追ってゼノヴィアとイリナが駆け出し、木場もその後に続いた。




「お、おい! 木場!」
「あーあ……あ、拙っ。イッセー、俺は木場を追うわ」
 そう言って朧が走り出した後、一誠の後ろから、彼らの主であるリアス・グレモリーとソーナ・シトリーが現れたのを見て、残された三人は、朧が気配を察して逃げたのだと確信した。
 

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