小説『ハイスクールD×D Dragon×Dark』
作者:()

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 白龍皇(はくりゅうこう)はコカビエルとフリードを抱え、冥界へと繋がる(ゲート)を開いている堕天使の仲間の待つ空き地へと向かっていた。
「ん?」
 その場所にいたのは堕天使ではなく人間。しかもさっきまで駒王学園にいた、黒縫朧だった。
「はぁーい、お久しぶりー。成長したな、ヴァーリ」
 彼は自ら殺した堕天使を(ゲート)の魔方陣の維持に使うために鉄柱で串刺しにし、それを組み合わせた奇妙なオブジェの上に朧は座っていた。
「驚いたな、まさか俺より速いとはね」
 顔の部分の鎧を解除したヴァーリのその言葉に、朧は静かに首を振った。
「お前と違ってこの距離をまともに移動した訳じゃないさ」
「それで、何の用だい? あの時の再戦でもするか?」
禁手(バランス・ブレイカー)になった白龍皇と戦うなんて真っ平ゴメンだよ。しかもお前、できるだろ? 覇龍(ジャガーノート・ドライブ)
「ああ、今なら君にも遅れは取らないさ」
 ヴァーリは戦意を(みなぎ)らせて、両腕に抱えた荷物を落とした。それに朧はうんざりした様子で首を振る。
「どいつもこいつも戦うのが好きだねぇ……付き合いきれない。俺がここに来たのはお誘い――勧誘のためだよ」
「勧誘?」
「そう、勧誘。言われた事をそのまま伝えるぞ。――魔王の子孫、ヴァーリ・ルシファーよ。我らは真なる魔王の末裔なり。今の偽りの魔王を倒すべく、我らと手を組め――だ、そうだ」
「興味ないな。魔王と戦うというのには心惹かれたが、そのために旧魔王の子孫たちと手を組む気はない」
 ヴァーリはあっさり首を横に振った。
「だろうな。それでは、ここからは俺からの勧誘だ」
 朧はこの展開を予想していたので、さほど気にすることなく言葉を続けた。
「さっきよりは面白い誘い文句なのかな?」
「聞いて判断してくれ」
 朧は咳払いをひとつして、ゆっくりと口を開いた。
「ヴァーリ、お前は世界に喧嘩を売る気はあるか?」
「さっきよりは面白そうだ。続けてくれ」
「ヴァーリ、お前の目標は何だ?」
「強者との戦い」
 朧の問いに、ヴァーリは間髪入れず答えた。
「何とも分かりやすい事だ」
 その回答に、朧はうんざりしたような顔をした。
「まあ、旧魔王派や英雄派よりは好感が持てるか」
「旧魔王派? 英雄派?」
「それについても今から説明する。今、俺が所属している組織の名前は『禍の団(カオス・ブリゲード)』。簡単に言えば『今』に不安を持つはぐれ者の集まりだ。その内部は『旧魔王派』、『英雄派』を始めとするいくつもの派閥に分かれている」
 それに朧は、派閥同士は基本的に仲が良くないと付け加える。
「そして、その頂点に立つのが『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』オーフィス」
 それを聞いたヴァーリが意外そうな顔をする。
「ほう、あれが組織の頂点なのか」
「意外だろう? 彼女はそんなものに興味がある者じゃ無いからな」
「彼女?」
「ん? ……ああ、オーフィスは今は少女の姿をしている。まあそれは今は関係無い。お前に言いたいことは、『禍の団(カオス・ブリゲード)』に入れば三大勢力を始めとする奴らと戦える。アースガルズとも戦えるし、最終的な目標は赤龍神帝……という事になっている」
「『真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)』グレートレッドか。という事になっているとは?」
「オーフィスを釣るためのエサだ。奴らにグレートレッドと戦う気はないよ。オーフィスは組織としての体裁を整えるための飾りだ」
「そうか……。それじゃあ、最後に一つだけ聞いておこう。君が『禍の団(カオス・ブリゲード)』に所属している理由が分からなかった。訊かせてくれるか?」
 長い沈黙の後、朧は顔を憎悪を浮かばせ、重々しく口を開いた。
「…………皆殺し。及び、オーフィスの幸福」
「オーフィスの? 一体何故?」
 ヴァーリは心底不思議そうな顔をして首を傾げる。
「これ以上は言わん。知りたければ旧魔王派の奴らにでも訊け。無論、さっきの事は言わずにな」
 朧はそう言ってから、ヴァーリに背を向ける。
「それでは、返答は後日。三日後の午前二時に、またここで」
 そう言い残し、朧はこの場から消え去った。



「これで重要な駒が一つ盤上に上がった。あいつは生まれこそ旧魔王だが、その存在は誇り高き白龍皇だ。旧魔王派にはそぐわない。非常に有用な駒になってくれるだろう」
 朧はどこか歪んだ顔でクッ、クッ、クッ、と不気味に笑う。
「『禍の団(カオス・ブリゲード)』のほとんどの奴らは使い物にもならない敵だが、美猴、黒歌、アーサーとルフェイは中々だ。そいつらがルフェイを除いて皆、性格的にアレなのはいただけないがな」
 その時だけ朧の顔は穏やかな笑みに変わる。
「白龍皇、孫悟空の末裔、猫しょう(ねこしょう)、聖王剣使い、魔法使い……! 駒は少々足りないが、悪魔たちも絡めれば滅ぼすのは可能。更に赤龍帝や白龍皇の惹きつける力のおこぼれにでも預かれれば十分やれる……!」
 その表情は一瞬で歪み、どこか虚ろな表情へと変わる。
(ようや)くだ。やっと終わらせてやれる。旧魔王派はここで(つい)える。俺が潰す。あの時の恨み、一時たりとも忘れた事はないぞ……!」

 草木も眠る丑三つ時の夜空に、壊れた(わら)いが響き渡った……。

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