動揺しているため、ふらふら家に帰りリビングに入ると、そこには一匹の黒猫が居た。
「くたばれ黒猫ぉぉぉ!」
黒き御手で創り出したハンマーをソファの上に寝そべってる黒猫に振り下ろす。
「む、手応えがない……?」
返って来たのは柔らかいクッションの感触のみだった。
「それは残像にゃん」
後ろから声がかかる。
「これだから仙術使いは……。で、何の用だ黒歌」
「暇だったから遊びに来たにゃん」
「どうぞお借りやがれ、この駄猫」
「冷たいにゃん!何で君は私に対してはそんなに辛辣なのかにゃ?」
「ほほう……お前が俺に何をしたか、忘れたとは言わせんぞ」
「忘れたにゃん」
堪忍袋の緒が切れた。
「俺の家の住所を一体何人に教えた!いつの間にか俺の家は禍の団のはぐれ者の避難所になっちまったじゃねえか!」
「そんなに怒らないで欲しいにゃん」
「怒るわ!ただでさえよく分からんテロリスト集団に入れられてうんざりしてるのに!」
「……ほんと、君がなんで禍の団に入ったのか理解できないにゃ……」
「勧誘がしつこかったんだよ。後、面倒だったから適当に頷いただけだ」
「ふぅん」
「そうそう、今日は珍しい……というより凄い物を見たぜ」
「へぇ。一体なんにゃ?」
「赤龍帝の籠手」
その単語を聞いた黒歌の表情が変わる。それも当然だ。これを聞いて驚かないのはよっぽどの馬鹿だけだろう。
「それ、神滅具の一つじゃない……。一体どこで?」
神滅具とは、その名の通り神をも殺す事が可能な神器。13種ある神滅具の一つが赤龍帝の籠手。効果は10秒毎に所有者の能力を倍化する事と、上昇した力を他へ譲渡する事の二つだ。
「兵藤一誠。悪魔に成りたてのアイツが持っていた。殺されても納得な力……殺すよりも取り込んだ方が良いと思うがね」
神滅具持ちを引き入れたとなったら組織の中での株も上がるだろうに。
「そりゃそうにゃ。でも、それだと堕天使側に赤と白の二天龍が揃う事になって……壊滅してたかもね」
「しかし、あいつは悪魔に転生した。……まあ、現状では持ち主が駄目過ぎて宝の持ち腐れだが」
自分の力を倍にするという能力ゆえ、元々の性能に左右される。
「そんなに酷いの?」
「元一般人だからな。あれでは一分経っても俺達には勝てない」
「それは酷いわねー。でも、白音の側にドラゴンかー……」
「心配か?この隠れシスコン」
「誰がシスコンにゃ!」
「三日に一度は妹の様子を見に来る奴がシスコンで無くて何だと言うのか」
「殺す」
黒歌が手から魔力を撃ち出す。
「その言葉、そのままそっくり返してやる」
黒き御手で盾を創り出し、魔力弾を防ぐ。
「「くたばれ」」
さあ、闘争だ。