小説『ハイスクールD×D Dragon×Dark』
作者:()

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「血の匂いがする……」

 俺は日課になっている夜の散歩の最中、住宅街で血の匂いを感じた。それも相当な量の血が流れたであろう事を感じさせる程濃密な。

「これは確実に致死(ちし)量だな。平和な日本でこんな事があるとなると……まさか」
 ある一つの可能性に行き当たった俺は、血の匂いがする方向へ足を向けた。





「ゴボッ。……な、なんだよこれ……?」
 一誠は目の前の光景に思わず嘔吐(おうと)してしまった。
 目の前にあるのは人間の死体。しかも至る所が切り裂かれ、逆十字の格好で壁に釘で貼り付けられていた。

「おや、これは悪魔くんではありませんか」
 一誠の後ろから声をかけたのは白髪の神父のような服を着た少年。

「お前が……これをやったのか?」
「イエス。なにせ俺、フリード・セルゼンは悪魔祓い(エクソシスト)なもので。という訳で君にも死んでもらいます!」
 フリードは(ふところ)から取り出した光の刀身を持つ剣で一誠に斬りかかる。
 一誠は何とかそれを避けたが、直後に足に鋭い痛み。

「どうだい、エクソシスト特製の祓魔(ふつま)弾は!光の弾丸だから音はありません!」


 そのままフリードが一誠にトドメを刺そうとした時、二人の間に金髪のシスター――数日前に一誠が教会へ送った少女、アーシアが一誠をかばうように立っていた。


「これはこれは、アーシアちゃんじゃありませんか。何で君は悪魔なんてかばってるのかな?」
「イッセーさんが……悪魔……?」
「そうそう。だからとっととそこを退いて俺にそいつを殺させなさい」
「……フリード神父、お願いです。この方を見逃してください」
「はぁ!?ふざけんなよこのアマ!」
 フリードはアーシアを拳銃を持つ手で殴り飛ばす。

「アーシア!」
 一誠は殴り飛ばしたアーシアに駆け寄る。

「マジでムカつきました。この苛立ちは君で解消させてもらいます。でもその前に、そこの悪魔くんを先に殺さないとダメみたいですねぇ」
 一誠はさっきアーシアにされたように、彼女の前に立っていた。

「俺とマジで戦う気ですか?君みたいな弱っちい奴はすぐに死んじゃいますよ?」
「女の子見捨てて逃げられるかよ」
「ヒュウ」
 フリードは口笛を吹いて、一誠に斬りかかろうとした瞬間、家の壁をぶち破って現れた、黒い刃に壁まで吹き飛ばされた。


「やっぱり悪魔祓い(エクソシスト)かぁ……――絶対に殺す」
 切り裂かれた壁の隙間から現れたのは、身長を超えるほどの大きさの黒い鎌を持った(おぼろ)だった。


「さて、殺そう」
「朧、何でここに!?」
 殺意全開の俺に、兵藤は当然の反応をしてくる。

「血の匂いを嗅ぎつけたらエクソシストを見つけた。以上」
「ふざけんなぁー!誰だ手前!」

 壁の残骸を払い除けてエクソシストが立ち上がる。その手にあるのは光の剣のみ。どうやら拳銃は先程の一撃で失なったようだ。

「貴様の敵だ。それ以上教える必要はない」
 殺気と共に光の剣と黒い鎌を向け合う。
 二人が同時に踏み込もうとした時、床が青白く光り、ある模様を描き出す。

「これは魔方陣?」
 床の魔方陣が光ると同時に、グレゴリー眷属(けんぞく)の面々が出現する。

「ひゃっほう!悪魔の団体様に一撃目!」
「俺を無視して他人にちょっかいかける余裕あんのか?」
 光の剣で斬りかかろうとするエクソシストを鎌で攻撃する。

「邪魔すんなよ!大体、君は一体何者なんだよ!」
「貴様の敵だと言ったはずだ。正確にはエクソシストの敵と言った所かな」
「意味分かんねえぇぇぇ!」
「分からなくていいからとっとと死ねよ」
「死ぬのは手前だぁぁぁ!」

 黒と白の軌跡がいくつも交差する。それは最初は拮抗していたが、次第に(おれ)が押していき、エクソシストの手から光の剣を弾き飛ばした。
 鎌を振り上げて止めを刺そうとした時、姫島先輩が声を上げる。

「堕天使らしき者達がこの家に複数近づいていますわ」
「……朱乃、イッセーを回収次第本拠地に帰還するわ」
「はい」
(どうやらお開きの時間のようだな)

「そこのエクソシスト。次こそは殺す」
「そいつはこっちの台詞だっつーの。今度会ったら殺してやんよ」
 逃げ出したエクソシストの憎まれ口を聞き流し、鎌を投げ捨てる。
 投げられた鎌はしばらくすると跡形もなく消滅した。

「部長!あの子も一緒に!」
「無理よ。魔方陣で移動できるのは悪魔だけ。しかもこの魔方陣は私の眷属しかジャンプできないわ」
 それは俺もジャンプできないという事ですね?

「そ、そんな……アーシア!」
 少し位俺の心配もして欲しい。必要ないが。
「イッセーさん、また会いましょう」
 アーシアが微笑むと同時に兵藤達の姿が消えた。


「さて、俺達も逃げるか」
「あの、イッセーさんを助けていただきありがとうございました」
「それは全く気にしなくていいが……俺の言った事理解……出来てるわけないか。外国人だし」
 ここで悪魔でない俺に対して言語の壁が立ち(ふさ)がった。
 言ってる事の大まかな意味は分かるのだが……仕方ない。

「よいしょっと」
「きゃっ!」
 金髪シスター(アーシアだっけ?)を(かつ)ぎ上げる。

「な、何をするんですか!?」
「言葉が通じないんだって……ええと、Please be quiet(静かにしててください)!」
 何
とか意味は通じたのか、話さなくなったシスターさんを抱えて、自ら空けた裂け目から家を脱出した。



 その後、俺は神器(セイクリッド・ギア)駆使(くし)して堕天使達(と警察)から逃げ切り、何とかオカ研の部室へとたどり着いた。

「これで誰も居なかったら……俺は泣く!」
 幸いにも部室には明かりが付いていたので、扉を開けて中に入る。

「朧君、無事だったのね」
「置いていくなんて酷いですよ部長。あ、これ戦利品です。どうしましょう?」
 肩に担いだ金髪シスター(気絶している)を示して言う。

「アーシア!?」
「なんで彼女を連れてきたの?」
「よくぞ聞いてくれました」
 そう、俺が苦労してここまで彼女を連れてきた理由、それは――
「嫌がらせです」
「……そう」
 みんな呆れている。無理もない。

「でも部長、どうしましょう?彼女を連れて来てしまった以上堕天使達と戦う事に……」
「そうね。一体どうしたものかしら」
「あれ?もしかして拙い事をしましたか?」
「とっても問題よ。これが切っ掛けで悪魔と堕天使の争いが起こる可能性もあるわ」
「そうですか……。では、情報が広まる前に堕天使共を殺して参ります」
「あなた……かなり無茶言うわね」
「そうですか?中級堕天使なら二、三人は余裕で(ほふ)れますが」
「情報が上まで伝わっていた場合、それこそ取り返しのつかない事になるわよ」
「でしたら一人逃がして人間にやられた事にしましょう」
 部長は頭を押さえてため息を吐く。

「はぁ……あなたは今日の所は帰りなさい。堕天使になにかしたら駄目よ」(うーむ……兵藤が助けたがってたから助けたが……色々面倒になってきました)
「はい、分かりました」
 取り敢えず、今日の所は家に帰ることにする。どうやら俺は考えるのは向いてないようだし。

「朧!」
 部室を出て行こうとした俺を兵藤が呼び止める。
「なんだ?」
「アーシアを助けてくれてありがとう」
「礼には及ばない。好きでやった事だ」
 そう言って、今度こそ部室を後にした。





「あ、アーシアを家まで連れてきてしまった……。ま、いいか」

 禍の団(カオス・ブリゲード)の誰かに見つかると面倒だが、あいつらを気にしてたら正面(まとも)に生きてられないし。
 俺の部屋にでも寝かせておこう。今日の寝床はソファだな。

-7-
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