小説『闇夜にはマロウティーでも』
作者:狂ピエロ(カガク生活)

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店を出たあと、私は帯夢に怒りをぶつけた。
「…帯夢さん、いくらなんでも酷いんじゃないですか?あんなに悲しんでいる人を疑うなんて…いくらなんでも酷すぎます!!」
そう怒っても帯夢は顔色ひとつ変えないでこう返してきた。
「彼女が犯人である可能性が高い。だから質問しただけだ。」
「だから!あの人はアリバイがあるんです!!!全員に聞いていただいても結構です!!!!!」
そういっても顔を変えない。ポーカーフェイスなのだろうか。その顔がなお私の怒りを誘う。
「…あの店の椅子、なにやら気になるシミがあった。あのシミは何だろうな?」
「あそこはカフェですよ?コーヒーのシミだってありえるじゃないですか!」
もう限界だ。この人は人間的ではない。感情というものがない。
「…いや、これだけ仕事をしているとあのシミが何なのかくらいすぐわかる。あれは泡だ。青酸カリ独特のな。」
…もう付き合ってられない。私の一番の疑問をぶつけた。
「じゃあ!死亡時刻とアリバイはどうなるんですか!!!!!」
そういうと、さっきまであんなに反発してきたのに顔が下を向いて何も言わない。こういうときって意外と浮かぶはずなのに…すると向こうから誰か走ってきた。
「あ、あんなところにいた。お?い、親父!弁当!!忘れてるよ!!!」
向こうから走ってきたのはまだ若い男性だ。20代くらいだろうか?
「おお、正治!弁当忘れてたか…」
どうやらこの人物は帯夢の息子らしい。
「まったく…親父何回目だよ。俺もパトロールとか忙しいんだから…」
「すまんね。あ、花茂芽、紹介しておこう。こいつは俺の息子で知場 正治(しるば せいじ)だ。今は警察をしている。まだ位は低いがな。今年で25だ。仲良くしてやってくれ。」
「あ、はじめまして。正治と申します。以後、お見知りおきを。失礼ですがお名前は…?」
「…花茂芽…染月 花茂芽よ。よろしく。」
私はさっきの怒りがまだ治まっていなかったため、こんな無愛想な返事で返した。だがこれはチャンスではないか?正治と一緒に行動したらこの無神経男から離れることができる。
「あの、いきなりで悪いんだけど、私と調査してくれない?もう私この人には付き合え切れないの。」
「え!俺がですか!いや、俺でいいんですか?」
「ええ、あなたがいいの。もうこの人はうんざり。」
「お役に立てるかどうかは知りませんが、あなたがよろしいなら…」
よし了承を得た。
「いいですね、帯夢さん。もう私はあなたに愛想つきました。私はこの人と捜査しますので。それでは。」
「ああ、勝手にしろ。お前の情に付き合っていたら俺の捜査にも支障が出る。とっとと行け。」
そう言葉を交わすとお互い違う方向を向いてその場を後にした…

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