小説『闇夜にはマロウティーでも』
作者:狂ピエロ(カガク生活)

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―真相解明 ジャーム―
「ククク…ここまできてもわからんとは。あいつも馬鹿だな。そうは思わんか?若造よ…」
「…!?花…茂芽…?」
「いや、違う。お前に会うのは初めてだったか。俺はジャーム。花茂芽の体に憑いた霊…とでもいっておこうか。あいつは別人格だと思ってるらしいがな。」
「これが…これが花茂芽が言っていた別人格なのか…この豹変ぶりは半端ないな。」
「豹変もなにも、別人だからな。」
まだ現実を受け止め切れてないようだ。若造はこれだから困る。
「…まぁいい。今回の事件。俺は知っていた。事件の関係性をな…」
「…いったい何なんだ?その関係性は?」
「お前もなかなか帯夢に似ているな。関係性というのはこの事件にかかわった人物だ。知宇夢に民斗、檸檬、それに帯夢…すべて俺の知人だ。しかも全員同級生…泰武もな。」
「…そういうことだったのか…親父も知宇夢も民斗も…さらに被害者まで…お前はどうなんだ?」
「年上に対してその言葉遣いは如何なものかと思うが…俺は違う。ただ帯夢が俺にその話をしただけで。お前は知らなかったのか?」
「ああ、そんなことは聞かされていない。で、この事件はどんな関係があるんだ?人間関係だけじゃ、事件の関連性があるとは言いにくい。」
この若造、資料を最後まで読んでいないな。そう悟った俺はさっきのページを開け、若造に差し出した。
「この事件の資料はもう見た。」
「いいや?これを読んでいたらわかったはずだぞ?事件の関連性がな。」
すると若造はいやいやその資料を読んでいた。
【喫茶店男性毒殺事件】

捜査記録:現場には青酸カリの瓶が割れた状態で放置してあったことから、被害者は抵抗したことが考えられる。血痕が爪に付着していることから、上半身に怪我を負っている可能性が高い。

これを見た瞬間若造はハッとした顔をし、今回の被害者の解剖記録を取り出し、穴が開くほど見つめ続けた。

【解剖記録:蔵巣 檸檬】

死因:青酸カリによる中毒死
死亡推定時刻:24時頃
(中略)
その他:左腕に怪我あり。引っかき傷のもよう。

やっとわかったのか、目を大きく見開き俺の方を向いた。
「この事件、まさか容疑者が…」
「ああ、この容疑者いや、真犯人は蔵巣 檸檬。そういうことだ。」
「でも、そんなことなら爪についた血痕を調べれば…」
「この事件もう捜査はされていない。ある人物の圧力でな…」
「その人物って誰…」
そこまで言ったところで俺はそいつの口を押さえた。
「…それはいえない。まだ、な。」
口につけた指を離し、落ち着いた声でこう告げた。
「まぁそういうことだ。俺は失礼する。後はがんばることだな。」
そういい、俺はまた花茂芽の中へ戻っていった。

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