小説『闇夜にはマロウティーでも』
作者:狂ピエロ(カガク生活)

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―真相解明・? 花茂芽―
私はホルダーに置いてあったミルクティーを一口含み、正治に目をやった。
「それで?私を犯人に仕立てようとしたって、どういうこと?」
正治はいつになくまじめな表情でこう話した。
「俺たちは勘違いしていた…いや、ある可能性を視野にいれてなかったんだ。」
「だからその可能性ってなんなのよ?」
車内が暑いせいか、私はいつも以上にいらいらしていた。
「死亡推定時刻のズレさ。」
「推定時刻のズレ?」
「そう、あの時花茂芽が死体に触ったときに冷たかったなら、その死体はちょっと前までつめたいところ、おそらく冷凍庫みたいなところに入れられていたんだ!」
…そういうことか。私は驚いたがその様子は表情に出さず車のエンジンをかけ、クーラーをつけた。
「そう。だからあの時死体は冷たかったのね…でもそれならなんであんな場所に転がしておいたの?もっと他に川なんかに捨てておいたら死体も発見されずにすんだはずなのに。」
「いや、それじゃ犯人が特定されるかも知れない。でも花茂芽が犯人として捕まればその心配もない。」
「だから被害者の口から泡が出てなかったのね。で、その冷凍庫ってどこにあるの?」
「それなんだ…その近くにはそんな倉庫も保存所もない。あるのは警察の死体安置所くらいしか…」
そうか、死体を置く場所がないんだ…じゃあこの理論は成立しないのか…?
私は考えた。なにか浮かびそうだった。
しばらく考えるとある人物が頭に浮かんだ。
あの人物ならそんな寒いところに死体を置くことが可能だ!しかも近くにあんな事件があった。青酸カリを手に入れることも可能。すべてが成り立つ。面白い具合に。だからあのとき私を…
「どうした花茂芽?顔が真っ青だぞ?」
そう、すべては成り立つでもなんで?
「…わかったわ。犯人が…」
私のその言葉はほとんど棒読みになっていた。
「本当か?それはいったい…」
「とにかく事件関係者を全員あのバーに呼んで。早急に、ね…」
私は上の空だった。あの人が犯人だなんて。
いや、でもまだ仮定だ。そうであってほしくない。
『お前の考えはよくわかった。その人物を追い詰めるなら俺も手を貸そう。あいつはおそらくとても頭の切れるやつだ。気をつけろよ。』
ジャームがそう話しかけてきた。
ありがとう…でもあまりがんばらないで。あの人は…
私はそんな絶望に苛まれながら車をNASUTACHUMUへ走らせた…

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