小説『闇夜にはマロウティーでも』
作者:狂ピエロ(カガク生活)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

「俺が…犯人だと?花茂芽、こんなときにジョークはいけないな。」
帯夢はそう笑った。私は信じたくない。だから追い詰める力もない…
『花茂芽、集中だ。集中するんだ。相手の仮面をはいでやるんだ。お前は自分の推理を信じろ。俺の力を貸してやる。俺を心の中で呼ぶんだ…』
ジャームを心の中で?仕方ない、やってみよう。
ジャーム、力を貸して…
すると目の前が一瞬真っ暗になり、その後白い壁が見えた。
さっきの現場と風景が違う…?しかも知宇夢さんやマスターもいない・・・
「な…なんだこれは!」
帯夢が驚いている。それは私も同じだった。
「…これは俺の空間、Kill the liarだ。」
そこにはおじさん・・・のような人物がいた。
「あなたは…?」
私はその人物に尋ねた。
「・・・?失礼なやつだな。お前は憑依霊の顔も忘れたか・・・」
「・・・憑依霊?もしかしてジャーム?あなたは私の別人格でしょ?」
「だから・・・もういい。そう、俺がジャームだ。この空間では俺の姿を見ることができる。そして最大の特徴が・・・」
そういうとジャームは指をはじいた。その音が部屋に響き渡るや否や帯夢の顔に仮面がかかり、私の手には一丁の銃が握られていた。私はもうなれたから驚かない。なにが起こってもおかしくないと思えてきたのだ。
「・・・やはりな、お前は何かを隠している。そうだろう?帯夢。」
ジャームは帯夢に確認するように問いかけた。
「・・・なんだ?このふざけた仮面は!まるでピエロじゃないか!!こんなもの・・・」
そういうと帯夢は仮面をはずしにかかった。が、まるで接着剤でくっつけられたかのように外れない。
「無駄だ。その仮面はお前の隠し事を暴かなければ外れない。そんなにいやなら隠している事を正直に話すんだな。」
「・・・で、私のこの銃はどうしたらいいの?」
一人残されたような私は二人の間を裂くようにジャームに尋ねた。
「それはまた後で使うかも知れない・・・さぁ、どうだ?帯夢、話すか?」
ジャームは帯夢にそうつめよった。
「・・・俺は隠していることなどなにもない。そう、犯人でもない。」
帯夢は依然として話す気はなさそうだ。
「・・・そうか、なら仕方ないな。花茂芽、その銃を使うんだ。安心しろ、それは空砲だ。帯夢は殺せない。」
私は銃を見た。そしてちょっと気が引けたが、もう容赦はしない。隠し事をする気なら・・・私は帯夢に銃口を向け引き金を引いた。
・・・しかしなにも起こらない。
「花茂芽、何をした?俺にはなんともないが・・・」
帯夢に変化は見られない。
「・・・花茂芽・・・話は最後まで聞け・・・。その引き金は使わない。本当の引き金はお前の心だ。いいか、こいつを追い詰めるんだ。そして追い詰めるチャンスが来たら勝手に弾が出る。お前は証拠であいつを追い詰めるんだ。だが不用意な発言はするなよ。銃が暴発してお前が怪我をする。」
「・・・わかった。用は帯夢さんの犯行を証拠で証明したらいいのね。それならそういってくれればよかったのに・・・それじゃ、いきますよ帯夢さん。」
私はつばを飲んだ。
「ああ、俺も大体はわかった。はじめようか。」
私は改めて帯夢さんに銃口を向けた。

-23-
Copyright ©狂ピエロ All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える