小説『闇夜にはマロウティーでも』
作者:狂ピエロ(カガク生活)

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「まず、私が薬を常備していることは私に近い人しかいない。知宇夢さんにはそのことを話していない。なら知っている人は限られてくる。これで知宇夢さんは犯人から外される。違いますか?」
私はこの発言でいけると思った。だがその瞬間!
「花茂芽!適当なことは…」
だがもうそのジャームの警告は遅かった。銃はまた光りだした。だがいつもの光とは違う、漆黒の光を放っていた。
「…それは無理があるんじゃないかなぁ?お前に罪をなすりつけようとした知宇夢がお前の鞄を探って薬を見つけた。これは成り立たないのかなぁ?え?花茂芽さんよぉ。」
すると銃のシリンダーの部分から後ろへ漆黒の光が飛んできた。さっきの弾と同じ形だ!
それは私に命中した。
「…ッ!!」
胸が苦しい。息が詰まったような苦しみだ…こんなもの直に食らってしまったのか…
私は胸を押さえ、その場にしゃがみこんでしまった。
「え?どうしんだい?そんなに胸を押さえて。大丈夫?」
いやみに言う帯夢の顔にあの頃の優しさはなかった。この人は…いやこいつはどうしようもない、悪魔に心を売った残念なピエロだ。
「…どうしたらいいの?ねぇジャーム、私どうしたらいいのかな?もう手もない、これじゃ、あいつを追い詰めることなんて…」
そういった直後、また目の前が真っ暗になった。だが今度は壁が黒い。違う空間に来てしまったのか?
「花茂芽、俺だ。」
「…ジャーム!ここはどこなの?」
ジャームの姿を見ると私は安堵した。
「…安心しろ。ここはさっきと同じ俺の空間、ただここは控え室のようなものだ。お前は俺に助けを求めたな?だから、少し落ち着かせようとしただけだ。」
「落ち着いてどうしろっていうの?もう手はないわ。あいつを追い詰めるには…」
するとジャームはフッと落ち着き払った声でこういった。
「お前、本当にあいつが犯人だと思ってるんだろ?」
「ええ、確信してる。」
「なら大丈夫だ。」
「なによ。助言はしてくれないのね。」
「…仕方ないな。少しだけヒントをやろう。あいつを追い詰めるには二つの情報がいる。あいつにしか犯行は不可能だったのか。そして殺害方法だ。」
「そんなことわかってるわよ!それがわからないんじゃない…」
少し怒鳴ってしまった。私ももう限界なのか…?
「花茂芽、少し考え方を変えろ。『犯人は本当にあいつか?』じゃなくて、『あの犯行はあいつにとって有利か?』。そして『あの犯行では他の人は不利か?』だ。これを考えればすぐわかる。そして犯行方法、お前はひとつ忘れていることがあるんじゃないか?それを思い出すんだ。」
なるほど…考え方の変更…私は少し落ち着いた。
「ありがとう、助かったわ。」
「そうか、では健闘を祈っている…」
そういうと空間は消え、あの帯夢がまた目の前に現れた。
「どうだ?何か情報は得られたのか?」
「ええ、もう許さない。お前の隠し事、暴いてみせる!」
私は心新たに帯夢に向かった。

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