小説『闇夜にはマロウティーでも』
作者:狂ピエロ(カガク生活)

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空間が消えて、しばらくの沈黙がおとずれた。
その沈黙を破ったのは下を向きうなだれている帯夢だった。
「あいつは…殺されるべきだったんだ…俺の…俺の一番の親友を…」
下を向いたまま帯夢はぽつりぽつりと話しだした。

―30年前  知場 帯夢―
俺は昔から不器用だ。だから友達も誰一人いない。話しかけられることも少ない。
だが今日は違った。何かが…
「あの…知場くん?掃除わすれてない?今日当番だよ?」
後ろからいきなり話しかけてきたのは結構イケメン…とはいえないが不細工ともいえない。地味な顔立ちの男だ。まぁ俺も人のことを言えないが…
「え…ああ、そうか。掃除だったな。すまない。今行こう。というより…何故俺の名前を知っている?」
「知っている?じゃないよ?俺同じクラスだよ?俺は泰武、栗布泰武だ。君は知場…なんだっけ?」
「知場 帯夢だ。」
「あ、そうそうそれそれ!それじゃこれからもよろしくね帯夢君!」
「ああ、よろしく頼む…」
「…ていうか掃除!早く行かなきゃ!」
「!そうだ、早く行かなくては…」
俺は駆け出した。
それにしてもあいつ…俺と同じ名前か…何か嬉しいな。
そんなことを考えながら走っているとあっという間に掃除場所についてしまった。
そしてしばらく掃除をし、自転車で帰ろうとした。
するとあいつがいた。しかも何人か引き連れて…
「あ、この子が帯夢君?」
俺は動揺した。
誰だこいつら…
「あ、帯夢?こいつら俺の連れたち!紹介するね。まずこいつが知宇夢。意外と可愛いだろ?」
泰武が紹介してくれたのはあの女、俺に最初に話しかけた奴だ。
「は?い初めまして。う?ん見れば見るほど可愛いわね♪」
…!女性にこんなことを言われたのは初めてだ。顔が赤くなるのがわかる。
「あ、お前!俺の知宇夢に惚れたな!知宇夢はやらねぇぞ?」
「え…あ!ちがっ…」
「こいつは民斗。頭の悪いチャラチャラした男だ。でも芯はちゃんとしてるんだよ?」
「芯はってなんだよ!俺は全然普通の男だよ!」
何か面倒くさい男だ…
「あ、お前いま面倒くさいとか思っただろ!」
「え…何故だ?」
「顔に書いてあんだよ!」
俺はポーカーフェイスだと思っていたんだが…
「それぐらいにしとけよ民斗。で、こっちが檸檬。おとなしそうに見えてかなり頭がキレるんだ。」
「…」
「…で結構無口。」
それは俺も同じだ。
「みんな俺の親友だ。お前もな。」
「よろしくっ!」
「よろしくな。」
「…よろしく。」
なんだ今日は?いつもと違う、というより一日で4人も友人ができてしまった。これは神のいたずらなのだろうか?
「さ、お腹空いたし、早く帰ろうよ帯夢!」
「あ、ああ…」
「ていうかお前んちどっち?」
「西側だが?」
「お、奇遇じゃん!俺んちも一緒だ。一緒に帰ろう!」
「あ、ああ…」
「お前さっきからそれしか言ってないじゃん!」
「あ、ああ…」
そんなやり取りを泰武としながら家に帰った。
何だろう。胸がワクワクしている。
明日もあいつらに会えるかな?
そんなことを思いつつ俺は眠りに落ちた…

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