小説『闇夜にはマロウティーでも』
作者:狂ピエロ(カガク生活)

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あの喫茶店でお茶を飲んだその数日後、俺のもとにある事件の発生が伝えられた。
その事件はこの間の喫茶店で起きた毒殺事件だった。
…まさか、な。そう言いつつ俺は現場へ足を運んだ。
大丈夫だろう。そう思いながらも俺は行動を急いでいた。なんだか胸騒ぎがするのだ。
そして現場に行くとすでに何人かの刑事が捜査を始めていた。
しばらくすると俺の元に被害者の身元が判明したとの連絡があった。その刑事が言った言葉は俺を惑わせた。
「え?…被害者は栗布 泰武。死因は青酸カリによる中毒死とのことです。」
栗布…泰武?いや、ちがう。あいつじゃないはずだ。きっと何かの間違いなんだ。そうだ!その場の状況でそう思っただけなんだ。違うんだ。絶対に違う。あいつじゃない。状況だ。状況が悪かっただけなんだ。死んだのはあいつじゃない。違うんだ、絶対に。
俺のそんな思想を裏切ったのはその刑事の言葉だった。
「被害者の持ち物の中に免許書が発見され、そこから身元が判明いたしました。」
…あれ?あいつ…なんで?あいつが死んだ?いや、ありえない。この眼で見るまでは。
「…遺体を見せてくれないか?頼む。」
「え?ええ、わかりました…」
すると彼は外の車に乗っていたシートをめくった。そこには見慣れた顔が…
青白い見慣れた…最初に出来た友人の顔。
その横にはあいつのものと思われる財布が置いてあった。なかには320円が入っていた。その値段は160円のマロウティー二杯分のお金だった。たまたまなのだろうが、俺にはとても深い値段だった。
「おい…おきろよ…おい!今度はお前が奢るって言ってたじゃないか!なぁ…二人分金があるじゃないか…なぁ、起きて茶を飲もうぜ。もっと面白い話…聞かせてくれよ…なぁ!起きろよ!!!!!!!」
遺体に無我夢中でしがみつこうとした俺の体を刑事が押さえつけた。抵抗したが、無駄だった。
その後は何があったかよく覚えていない。ただ落ち着いた俺はこう決心した。
犯人をこの手で…殺してやると。
誰だろうと構わない。俺の最初の友人を殺した憎い殺人犯を…
この手で殺してやろうと。
だから俺は捜査をし、犯人をみつけようとした。
だが、それはできなくなってしまった。ある人物の圧力らしい。だが俺は止まらない。警察として無理なら知場 帯夢として犯人を見つけ、殺すまでだ。
この時、俺の心は復讐の心で満たされていた。
そして犯人に一人心当たりがあった。それも信じたくない人物だったが、それが本当なら仕方ない。俺はそいつの家に向かった。そう、蔵巣 檸檬の家に。

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