小説『闇夜にはマロウティーでも』
作者:狂ピエロ(カガク生活)

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ピンポーン…
部屋中にチャイムが鳴り響いた。
俺はこの日、この時を待ちわびていたのだ。俺の親友の命を奪った憎き相手を殺す日を。
俺は一呼吸置き、チェーンを外し、鍵を開け、ドアを開けた。
そこには檸檬が立っていた。
「…中に入れ。やることが山積している。」
「ええ…」
俺は緊張しているのかそんな言葉しか出なかった。
「…本当に私助かるの?」
「ああ、俺は警察だぞ?警察の抜け道くらい知っている。とりあえず落ち着かなければ話にならない。茶でも飲むか?」
「ええ、いただくわ。」
俺は台所へ行き、ポットに茶っぱとある物をいれた。
ある物とは、シアン化カリウム…青酸カリだ。
そこに電気ケトルの湯を注ぎ、カップに茶を淹れた。
そのカップを檸檬の前に持っていく…がその手は震えていた。さすがに人を殺すにはためらいが出るのだろうか…
だが俺は決めたんだ。
泰武を殺した犯人をこの手で殺すと。
俺は震えを抑えながら檸檬の前まで茶を持っていった。
「…レモングラスティーね。落ち着くにはこれね。でも…落花生の匂いがしない?」
俺は心臓が跳ね上がる音を体で聞いた。だが平常心を保たなければ…
「それは、その、なんだ。隠し味みたいなものだ。気にせず飲んでくれ。」
「ああ、そう。じゃあ…」
そう言うと檸檬は茶を飲み干した。
「で私はなに…を…!!なによ…これ…ま…さか…毒…?」
「ああ、青酸カリだ。名前くらいは聞いたことあるだろう?俺の親友を殺した奴を生かしておくわけないだろう?」
「…最初から…わ…たしを…騙す…つ…も…り…」
そう言うと目の前の女は、屍と化した。
人の死とは実に呆気ないものだ。
たったひと摘みの粉末でこんなにも醜く息絶えていくとは…
そんなことを考えている暇はない。なぜなら俺はここで捕まる訳には行かないからだ。
死体の処理を行なったあとは次の段階に進まなくてはならない。
「…花茂芽か?俺だ。明日の夜空いているか?いや、もし暇なら…」
そう、次の段階とは罪から逃れることだ。

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