小説『闇夜にはマロウティーでも』
作者:狂ピエロ(カガク生活)

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「・・・で?お前の見つけた確証とやらはいったいなんだ?」
「・・・警察はこんなことも調べないんだな。」
「まぁ捜査も始まったばかりだからな。」
俺はさっきの机からティーカップを持ってきた。
「この中の液体、貴様は知っているか?」
「・・・鮮やかな桃色だな。なんだこれは?」
「そうか、お前はあまりお茶を飲まない奴だったな。まあいい。これはマロウティーといってな、本来はこんな色ではないんだ。あっちに置いてある青色が本来の色だ。あの酸っぱい臭いはおそらく青酸カリだろう。」
「・・・で?」
「これには口紅がついているだろう?この色は花茂芽のものだ。この奇妙な赤はあの趣味悪女のものだ。」
「詳しいな。」
「四六時中一緒にいるからな。あの毒々しい赤は間違いなく花茂芽のものだ。調べてみるといい。」
「そうか、あの口紅は花茂芽のものだということはわかった。で、それがなんの証明になるんだ?」
「このカップに入っているマロウティーはピンク色だろ?これは酸性のものがマロウティーに入ったということだ。ではその酸性のものはなんだろうか?」
「・・・何なんだ?じらさずに言え。」
苛々しながら帯夢が言った。
「これはおそらく花茂芽の睡眠薬だろう。」
「また花茂芽の持ち物か・・・」
「ああ、睡眠薬は酸性だと自慢してやがったからな。それで眠らされていたんだろう。これもついでに調べてもらえ。」
「・・・鑑識。」
帯夢は鑑識に内容物を持っていかせて調べてくるようにいった。
「大体はわかった。こいつで花茂芽を誰かが眠らせたというんだな?」
「ああ、そのとおりだ。」
「それは確実なのか?」
「なんだと?どういうことだ?」
「仮にこれで花茂芽が眠っていて犯行は不可能だとして、これが花茂芽の自作自演だったらどうだろう?」
「・・・そんなことか。」
「・・・!!最初からつかれるとわかっていたのか。」
「無論だ。ティーカップの近くにはスプーンがついていない。だがこの睡眠薬の使用適量は一滴だけだ。その一滴だけでスプーンもなく全体をピンクに染めることはできたのだろうか?」
「花茂芽がたくさん入れたということは?」
「それはないだろう。これは花茂芽の持ち物だ。使用量を間違えるわけがない。仮にたくさん入れたとしたら即死だからな。」
「・・・ではお前はこれを犯人が入れたものだというのか?」
「おそらくスプーンが無いのも犯人が持ち去ったからだろう。」
「・・・これもダメか。俺の負けだジャーム。」
また自ら手札を破った帯夢の顔は安堵に満ちていた。

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