「…きてください」
声が聞こえる、逆に声以外は何も聞こえない、これほど静かなのは何時ぶりだろう。
「起きてください」
重たくなった瞼を開けるとそこにはリナトの顔があった。
「……リナト?何をしているんだ?」
「秋元さんが心配になって追いかけたら案の定、あなたが道で倒れていたんですよ、ですから軍医の所に連れてきたんです」
そう言われて辺りを見渡すと雑魚寝状態でたくさんの兵士が横たわっていた。
「そうか…迷惑を掛けたな」
立ち上がろうとすると少し立ちくらみがした、リナトが肩を貸そうとしたが払いのけ俺は歩いた。
その後ろ姿に語りかけるように。
「秋元さん…、アンクの事、知りたくありませんか?」
そう声が聞こえた。
聞こえた声に俺はハッとした。
「…アンク」
今思えば不思議な男だった、同じ部隊に所属していたがそれ以外は何も分からない、空爆要請の時もなぜ敵国の言葉を知っていたのか謎だった。
俺は人としての好奇心から、そしてアンクという人と知り合ってしまったから、アンクの事を知りたいと思った。
「教えてくれ、あの男が何者なのか」