「ジジイのことか!?」
まさかと思い、俺は声を荒げていた。
いきなり大声を上げたせいかリナトは身を縮み上がらせていた。
「あ、あのっ、すいません、間違いだったら申し訳ないんですけど、あなたが探しているのは上等兵で黒い肌をしていて老人の兵士、ですよね?」
「ああ!そうだ!」
ジジイの居場所についての情報に期待が募るがその期待は最も残酷な形で砕かれた。
「あなたが探しているのは恐らく、アンドレク、私たちがアンクと呼んでいた人物だと思います」
「アンク?」
ここで初めて俺はジジイの名前を知らない事に気付いた。
「はい、それでそのアンクについてなのですが…」
「居場所を知っているのか!?どこだ!教えろ!!」
自分でも必死になっているのが分かった。
そんな俺を一瞥した後リナトは言った。
「…アンクは、死にました…、上陸戦の際に受けた傷により失血死、それが死因です」
それは、この戦場で一番よく聞く言葉で、一番聞きたくない言葉だった。