小説『ボーッとしていたら、過去に戻ってしまいました。』
作者:氷菓()

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何分か経って背伸びをする。
もうそこには薊先生の姿はない。ついさっきまではそこに座り込んでいたが、
いきなり自分で自分の頬をバチンっと叩き、何かを決意したような表情に見えた。
するとその後に何故かお礼の言葉を何度も何度も繰り返した。
そして私が苦笑いを浮かべるとそれにやっと気がついたのか薊先生は話題を変えた。
その話題とはさっきの阿姫の話。あと、阿姫が言い残した言葉のことについて。
阿姫はまるで私と同じ待遇に遭っているような、そんな言い方だった。
だとすれば、小学二年生なのにも関わらず、大人顔向けの言葉遣いのことも納得がいく。
と私が勝手な推理に入ると薊はふと私にこう問いかけてきた。
゛どういうことなの?゛と。最初は私も今の自分の置かれた現状を詳しく説明しようとしたが、
ある漫画の事が思い浮かんだ。違う世界で自分の置かれた現状を人に話してはならない。それはタブーだと。
このことは漫画の話だからただの仮説になるわけだが...
一応話すのは避けて通りたいので、薊には゛今は言えません゛と固く口を紡いだ。
薊は、私に根掘り葉掘り聞かずに゛そっかー残念゛と微笑みを浮かべ、
空き教室を後にしていった。
簡単に説明するとこんな感じになる。
そういう訳で今は空き教室の中一人でボーッと窓の外を見ている。
窓の外には海が近いせいかカモメが二羽目の前を飛んでいき、夕焼け空が綺麗に写っている。
今頃、元居た私の世界はどうなっているんだろう?
一時的に時間が止まっているのだろうか?
そんな考えてみても答えが見つからない問を私は何度も自分に問いかける。
すると教室のドアがガラッと開いた音が背後から聞こえ、振り向くとそこには、
誰も居なかった。しかもドアは開いていない。
「聞き間違いか..」
不思議に思いながら窓に視線を戻そうとするとドアの隙間に何か挟まっているのを見つけた。
なんだろう?と近づくとそれは白い封筒だった。
宛先名もなし。気味が悪いが私は開けてみることにした。
封を開けると手紙が入っていた。その手紙には丸字で、

屋上に今すぐ来て。
             篠原 阿姫

と記されていた。そういえば阿姫が何かを言い残していったよな...と思いながらも私は空き教室を
出た。そして早足で屋上に向かう。周りはもう放課後だからなのかさっきまで騒がしい廊下も
今となっては静かな廊下になっており、少しだけ気味が悪かった。

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