小説『ボーッとしていたら、過去に戻ってしまいました。』
作者:氷菓()

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「え...?」
屋上に沈黙が走る。
目の前にあった対象が何処にも見当たらない。
視線を下に向けるとそこには、阿姫が倒れていた。
「阿姫.....ねぇ」
必死に声をかけても気を失ったままだ。でも微かに息はしていた。
それを確認した瞬間に私は腰が抜けたのか、ぺたりと床に座り込んだ。
゛とにかく良かった゛今の心境はそれが一番だった。
目覚めたらたくさん聞こう。
未来では何が起きているのか。何故貴女は未来から来たのかをそう素直に受け入れられるのか。

屋上で何分くらい経っただろうか。
だんだん空が薄暗くなり、肌寒くなってきた。
私は、阿姫の体を優しく揺らし、゛阿姫ー゛と声を掛けてみた。
すると阿姫はゆっくりと瞼を開いた。すると、
私の事が目に入った瞬間にカッと目を見開き、ガバっと起き上がった。
「うぉっ!?」
私はいきなりのあまり、低い大声を出してしまった。
阿姫は起き上がってもなお俯いたままだ。
そして私の方に目を向け、
「..私なんでここに居るの?」
「..........いや、自分の足でここに来たからでしょ。」
私が正論を述べると沈黙が走った。
「え、えっと色々聞きたいんだけどさー」
「................帰る」
「え?」
「ママに怒られちゃうもの!」
「いや、ママっていう年頃じゃないだろ。さっさとふざけてないで....」
そう言うと阿姫は頭の上にハテナマークをいくつも浮かべていた。
「あのさ、今何歳?」
「6歳」
「...........あ...どうぞお帰りください」
おいおいおいおいおいぃい!?
まさか、正気に戻ったとか?
ん?どう言うこっちゃ?分からん.............。
頭の中が混乱してなんだか整理がつかない。
すると阿姫がスカートについたゴミを払い終わり、
屋上のドアへと向かおうと起きたばっかだからかフラフラとした歩き方で歩いていく。
「気をつけr」
と私が言った瞬間に目の前の阿姫が何かにつまずき転びそうになった。
「あぶねぇッ!」
私は全速力で走り阿姫が頭を打つ寸前で受け止めたが、
床に顔面が叩きつけられた。
「ッ...」
声に出せないような痛みで阿姫はすやすやと眠ってしまっている。
なんでこんなときに寝んだよ...馬鹿っと思いながら周囲を見回すと
あるものに視点があった。
そこには阿姫がつまずいたもの...それはあの黒い箱だった。
もしかしたら、あの中に...何かヒントがあるのかもしれないッ....
必死に手を伸ばすが届かない。阿姫が私をがっちりと捕まえており、
身動きすらとれない。もう少しなのに。現代に帰れる手がかりかもしれないのに。
私の視界がグラッと揺れ、私は目をゆっくりと閉じ気絶してしまった。

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