必要なものと情報を集めて教会に戻ると、レフカダ達が色々と準備をしてくれていた。
人数もあるだろうが、ちょっとしたパーティーみたいな雰囲気だ。
彼らのお陰でサジメの時とは打って変わり、穏やかで賑やかな夕飯となった。
「しかし、あのアッシュがこんな立派になるとはねぇ」
「ほーんと、オシメ取っ替えたげてたのにねぇ!」
「それがなぁに? 神様の代理だって?」
「やーねーぇ! こーんな立派んなっちゃってさぁ!」
改めて強調するが、この世界は危機に瀕している。
俺が負ければ死の世界になってしまう。
なのに何だ、この緊張感の無さは。
外ののどかさといい、元気すぎる人達といい、疑いたくもなる。
「そうだ、アッシュ達の旅の祈願として、とっときの酒をあけちまうか!」
「お、良いね良いね!」
「よ! 太っ腹!」
重ねて強調するが、この世界は危機に瀕している。
外はのどかとはいえ、悪神の分身が取り憑いた魔物が暴れ回っているのだ。
戦う術の無い一般住民ならば、命が危ない。
もう少々、こう、緊張感ってものが欲しいのだが。
「おおお、リノちゃんも呑むかぁ?」
「い、いえ、私は……」
「ダーメダメダメ、お二人さんはまだ子供なんだからさ」
「しゃーねーや、ジュースで我慢だな!」
「あはははははは!」
再度強調するが、この世界は以下省略。
一応未成年は飲酒禁止ってのは、この世界でも同じらしい。
本当は呑める年齢なのだが、周りに合わせてジュースにしておく。
酔っ払えれば、少しは楽しいのだろうか。
周りが酔いつぶれていく中、レフカダだけは顔色一つ変わらない。
酒豪ってヤツだろうか。
「やれやれ、みんなだらしがないですねぇ……」
そう呟くと、グラスの酒を一息で飲み干した。
「で、アッシュ」
「はい?」
「君達が出発するまでに渡す物があるんだが、その前に」
「……何です?」
「聖断の刻に関して、伝えなければならない事があります」
レフカダの言葉に、だらけた気分が引き締まる。
「これは……そう。言い伝えというヤツではあるのですがね……」