翌朝、二日酔いの面々に見送られながらツストを出発した。
レフカダは、やはりけろりとしていた。
一度本気で酒を酌み交わしてみたい、と少しだけ思った。
それが叶わぬ事だとは解りきっているのだけど。
「それで、だ」
「はい」
「この次はどこへ行くんだっけか」
「ええと、ミードです。少し距離がありますね」
教会からサジメ、ツストと比較的短距離ばかりだったのだ。
朝出発すれば午後には到着するくらい近かった。
地図で確認してみたが、どうやっても夜までには着きそうにない。
テントを張って野宿するしかなさそうだ。
女の子にはちょっと酷かもしれない。
とりあえず今の持ち物を確認し、必要な物を買い揃える。
「この際だからテントも予備買っとくか」
テントは高いくせに、一度しか使えない。
使い回しが出来そうなのだが、そうはいかないらしい。
何でも、寝ている間は魔物や獣を寄せ付けないように防護魔法がかかっているらしい。
お陰で安心して外でも寝られるのだが、その防護魔法は一晩しか効果がないのだ。
まぁ、敵の猛攻に耐えるのだ。
それであれば一晩持つだけで御の字だろう。
「後は薬と食料と……」
「あの、アッシュ」
「ん? 何?」
「その……色々買いましたけど、買った物は?」
俺はごくごく自然にやっていたせいで気にもしていなかった。
かさばるテントも、何種類か買った薬も、俺の手には無い。
「ここにしまったから、ちゃんとある」
俺はそう言いながら袋を示す。
傍から見れば、薬草でも入ってそうな袋だ。
大きさは両手のひらに乗る程度。
仕事上あらゆる物の持ち込みが禁止されている中、これだけが唯一持ち込みを許可されている。
理由は簡単、必需品だから。
「便利な袋さ。武器やら防具やら薬やら……引きずって持ってく訳にはいかないだろ? だからこれに全部入れてる。限界はあるにはあるが、入らなくなるって事はまず無いし」
正式名称は知らない。
四次元ナントカ、では無かった気がする。
「出すときに混じったり中で壊れたりは?」
「しないね」
ほら、とさっき買ったばかりの薬瓶を取り出してみせる。
原理は知らない。
手を突っ込めば望んだ物が出てくるし、必要ならば入っている物のリストさえ出してくれる。
これが無ければ、世界を救う事なんて出来ない。
「って訳で、ちゃんと有るから安心してくれ」
「は、はい」
必要な物は他に何かあっただろうか。
袋の中身が書かれたリストを手にしながら、賑やかな商店を二人で回っていった。