愛しているなんかじゃ伝えきれないこの想い
でも愛している以上の言葉が見つからなくて…
結局、俺は君を愛しているんだ
９話『はじまりの日・中編』
【アバターを作成してください】
面倒だ
どうせリアルの容姿が反映するのだから最初からリアルの容姿で設定しとこう
無駄に多いパラメーターを微調整しリアルの自分を鏡に写したかのような瓜二つのアバターを造り上げる
【キャラクターネームを設定してください。なお一度設定すると変更することが出来なくなります】
名前か…βテストでは面倒だったのでアカネで登録したが…どうせなら変えてみるか
…そうだな、朱音を別読みにしたシュオンなんてどうだろう？
うん、なかなかファンタジー染みているじゃないか
【Shuon で設定しますか？】
Ｙｅｓ Ｎｏ
Ｙｅｓっと
【設定完了。お疲れ様でした。ではsword art onlineを心行くまでお楽しみください】
何がお楽しみください、だ
貴方は此れから一万人の人間を恐怖に陥れるくせに…
意識を閉じ込めていた瞼を開けると俺は中世のヨーロッパのようなファンタジー然とした街の広場に立っていた
ふと周りを見てみると次々と俺と同じように人が現れる
大多数がこのファンタジーワールドを見て感激の声を上げている
しかしその中には戻って来たとでもいうような顔つきをした者も極僅かに存在した
言うまでもなく前者が新規プレイヤーで後者がβテスターだろう
うーん、茅場さんが強制的にこの街に呼び出すまでそれなりに時間があるな
よし！フィールドに出てソードスキルの確認でも行うか
まずは武器を購入しなきゃだから…武器屋は確かあっちにあったな
じゃあ行きますか
｢おーい！そこの！そこの黒髪の兄ちゃん！｣
ん？なんか呼び止められてしまった
赤い髪の若武者のような凛々しい男に
てかこの人絶対クラインだ
雰囲気がクラインです！と語っている…嘘だけど
｢ん？何かよう？｣
｢その迷いのない歩き方…アンタβテスターだろ？ちょいとレクチャーしてくれねぇか？｣
…何だろうか、初対面なのにこの図々しさは
いっそ好感が持てちゃうレベルだな
｢んー、まぁ断る理由もないしいいよ？｣
｢おぉ！アンタいい奴だな！俺の名前はクラインってんだ！宜しくな！｣
｢俺はシュオンだ。宜しくなクライン｣
｢おう！シュオンだな！早速レクチャー頼むぜ！｣
｢じゃあ先ずは武器屋に行こう。この先に格安の武器屋があるから｣
まぁ、そんな流れで急遽クラインとパーティーを組むことになった
ちなみに武器屋ではクラインが曲刀カテゴリの海賊刀(カトラス)を選び、俺は最初に支給されているコルを全部使い、片手直剣カテゴリのブロードソードと片手用短剣カテゴリのアイアンタガーを購入した
｢おわぁあああ！っ！当たらねぇ！｣
確かにそれだけ滅茶苦茶に振り回しても切れるのは空気だけだろうな
｢違う違う、初動でほんの少しタメてスキルを立ち上がらせてから剣を振れば後はシステムが自動でやってくれるから。だからそんなブンブン振り回さなくていいの｣
｢う〜む、まだコツが掴めねーんだよなぁ…なぁ、シュオンの手本見してくれねぇか？｣
手本…ねぇ
｢まぁ、いいけど…たぶん参考にはならないぞ？｣
背中からブロードソードを抜き右手に握り、腰に差していたアイアンタガーを左手に逆手持ちに持つ
｢は…？どういう…｣
クラインが何かを言い終わる前に再度POPしたフレイジーボア４体のうち一番近くの１体に接近する
こちらに気付いたフレイジーボアもただ黙って殺られるわけもなく突進してきた
それをサイドステップでかわし、すれ違い様に片手直剣の単発ソードスキル<レヴァン>を食らわせる
他のゲームだとスライム相当の雑魚モンスターだけにその一撃だけでポリゴンの欠片となり消えた
そのまま勢いを止めず残り３体のうち１体を短剣投擲スキル<ルータス>で仕留め、残りの固まっていた２体を単発スキル<ストライク>で纏めて消した
ふぅ…、スキルの反動である硬直時間が身体に染み付いている感覚が鈍っていないと教えてくれた
ちなみに<レヴァン>と<ルータス>は威力がスキルの中でもかなり弱い設定なので硬直時間が存在しない
まぁフレイジーボアを倒すには十分な威力だが…あと<ストライク>は言うなれば<ヴァーパル・ストライク>の劣化版だ
威力は<ヴァーパル・ストライク>の十分の一しかないが初級スキルの中では破格の威力を持つため止めをさす時などに重宝してる
うん、大丈夫だ
今までの準備は無駄ではない
絶対に…生き残ってやる
｢す、すげぇええええ！｣
というクラインの感嘆の声とともに硬直時間が解けた
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━後編にする予定がなぜか中編に…。すいません長々と続けて…次回は後編です！それとアンケートですが圧倒的に疾風が多いですなぁ…やはり皆さん速さが足りない！とか好きなんですかね？