小説『ソードアート・オンライン―黒の剣舞―【凍結】』
作者:バイタリティ()

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春の木漏れ日を君の膝の上で感じて

空に咲いた大きな花火を手を繋ぎ見上げ

夜なのに仄かに明るい幻想的な十五夜を二人で愛で

寒いね、と寄り添い歩く雪が積もった冬の朝


俺の毎日に君がいて
君の毎日に俺がいる

そんな形のない幸せを護りたい
そう願った



12話『捜索』

なんで……なんでユウキがここにいるんだ…

「兄…ちゃん…兄ちゃん!」


その幼い顔に涙を浮かべユウキは俺の胸に飛び込んできた

肩が震えている

当たり前だ
俺みたいに覚悟を持ってこの世界に飛び込んだイレギュラーでもなければこの状況を受け入れられないだろう

それにこの子はまだ13歳だ
不安だって人並み以上に感じているはずなのだ



ギュ…
「…大丈夫だ。兄ちゃんが必ず護るから安心しろ」

そんな安い言葉しか言えないけど決意は本物だ
それが少しでも伝わればと力強く抱き締める

「……うん」


その想いが伝わったのかはわからないがユウキは頷いて少しぎこちなくはあるが笑顔を見せてくれた









「そうか…お祖父様が……」

完全に誤算だ
というよりあの時『ソードアート・オンライン』のことについて聞かれた時に違和感を感じたはずなのに…!


「うん、それでボクと姉ちゃんがゲームをすることになって……ってあれ?姉ちゃんは?」

なっ!?アイコもいるのか!
いや、そんなことよりこの一万人がいる広場ではぐれてしまったなんて…!


「ユウキ!アイコとフレンド登録はしてるか!?」


「え?あ、うん。一番最初に姉ちゃんとフレンドになってるけど……」


「ならメインメニューからフレンドの位置確認をしてくれ!」


「う、うん!…えっと、あった!ここの広場の高台の近くだよ!」


高台…あっちか!

「行くぞユウキ!まずはアイコと合流してする!」


俺はユウキの手を取り高台のある方向に走り出した






ラン(アイコ)side


しまった…ユウキとはぐれてしまった

ただでさえ不安なのに今現在近くにいた妹がいなくなった私は精神的にかなり疲労していた


怖い…助けてくれ兄さん…


でもこのままここにいても状況は変わらないだろう

普通の迷子ならいざ知らずこの広場には一万人がひしめき合っているのだ
だから私は高台を目指すことにした


あそこなら遠くまで見通すことが可能だしもしかしたら兄さんが気付いてくれるかもしれない


なら早く、と思った矢先だった


「なんか言えよくそガキッ!」


すぐ近くの路地裏でそんな声が聞こえた

そこに目をやると私より少し年上くらいの栗色の髪の女の子が頭二つほどはある身長差の男に怒鳴られていた


「お前が突っ立っていたからぶつかったんだ!お前が悪いんだから謝れ!」


…意味不明だ
でも男の気持ちも解らなくはない

何かに当たってストレスを発散したいという気持ちは嫌というほど解る


現に私も1人でこのゲームに参加していたら同じようなことをしていただろう
でもそれやらないのは兄さんとユウキがいるからだ
必ず会えると信じてるから


あの女の子は1人なのだろうか
さっきから俯いて肩を震わせている
でもそんな反応だと…


「ッ!なんか言えって言ってんだろっ!」バシッ


「きゃあ!」

!?
やっぱりあの男には気に入らなかったんだろう

男は女の子の頬を平手打ちした

…さすがに見てられない!


「大人気ないだろ!止めないか!」

男と女の子の間に割って入る

「…あぁん?関係ないやつは引っ込んでろよ!」


「女の子に暴力振るってるアンタにそんなこと言える権利はない!」


「クソガキが!………!へへッ!」

私の言動に酷く苛ついた様子の男が急に態度を変えた

まるで良いことを思い付いたと言わんばかりに


「なぁ?お前はさっき茅場が言ってたこと本当だと思うか?」


茅場が言ってたこと?
あのゲームでの死は現実での死を意味するというあれのことだろうか?


「ここで死んだら本当に死ぬなんて誰もわかんねぇよなァ?だから……ちょっと死んでみてくれよ?」

ゾクッ
その狂気に満ちた笑みを見た瞬間、全身に鳥肌が立った

男は腰に差していた両手剣を抜くと、ニヤニヤと気持ちの悪い笑いを浮かべゆっくりとした足取りでこちらに向かってきた

「ッ!」


無意識のうちに庇った女の子と抱き合いながら足摺しながら下がる
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!


が、男はそんな私たちの反応を楽しむようにゆっくりと上段に構えた剣を振り下ろ――


「シッ!」


「グアァアア!!」


されなかった

見覚えのある、というよりさっきまで求めてやまなかった背中が私たちの前にたった






シュオンside

「ッ!兄ちゃん!姉ちゃんが高台の方向からその近くの路地裏に入ったよ!」

「分かった!」

俺たちはユウキのナビゲーションのもと人の隙間を縫うように走っていた

「でも何で路地裏に入ったのかな?姉ちゃんなら目立つ所で探したりすると思うけど…」


確かに…アイコは頭のいい子だから今のようにその場を離れたりはしないはずだ
迷子になったときははぐれた場所から動かないか、目印になりそうなところでじっとしている
それが鉄則だとアイツは分かってるはず…だからこの広場で一番目立つ高台に行こうとしていたのだろう

……あぁ、なんかテンプレな予感がした


詳しくいうなら不良から絡まれていた女子を助けるお約束的な……


「兄ちゃん!そこの角を曲がった所で姉ちゃんが止まってる!」



「ここで死んだら本当に死ぬなんて誰もわかんねぇよなァ?だから…ちょっと死んでみてくれよ?」


ッチ!変な予感だけは当たるもんだ!

ユウキの手をそっと離すとそのまま両手剣を振りかざしている男までダッシュする

距離は200メートルちょっと

ダッシュの間に背中の片手剣と腰のダガーを抜く
そしてソードスキルのモーションに入る

右手、片手単発攻撃<ストライク>

左手、短剣単発攻撃<アインスト>



明らかオーバーキルだがここはアンチクリミナルコード有効圏内

つまりプレイヤーを絶対傷つけられない
武器で斬りかかってもシステムエフェクトが光るだけでHPバーは減らないのだ

その代わり、いつまでも続くけど

というわけで


「シッ!」


「グアァアア!!」

恐怖を刻み込むお時間ですよ





━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━先生!ストーリーさんが進みません!落ち着いて下さい奥さん。直に良くなりますよ…たぶん
ってな感じで12話です!アイコsideは初めてですねー。今回は難産に難産をかけて2乗したくらいに難産でした…だから最後らへんはシュオンのテンションがおかしくなっています。私もおかしくなっていますWWW
あとユニークスキルは疾風に決まりました!
割合的には疾風6、魔眼4、バーサーク0という…魔眼も結構多かったので他のキャラのユニークにするかアイテムという形で出そうか迷ってます!それとアニールブレードの件はダイジェストでやろうかと…友達が早くアニメの一層攻略書けやコラァ!みたいなこと言うもんで…
さて次回の話は…って思ったんだけどこの小説が次回予告通りになることなんて少ないので言わないでおきましょう!では長くなりましたがまた明日!

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