小説『ソードアート・オンライン―黒の剣舞―【凍結】』
作者:バイタリティ()

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「―起きなさい」


その言葉には不思議な強制力があった
起床して3分は必ずボケ〜っとしてしまう俺がその声を聞いただけでシャキッと起きてしまうくらいには

ってか

「ここ…どこ?」


書斎のような部屋
ちなみに俺はその書斎に備え付けてあるソファーに寝ていた


「おはよう。目覚めは如何かな少年?」


突然後ろから声をかけられた
それもついさっきも聞いたばかりの不思議な強制力を持つあの声



振り向くと髭を少し蓄えたスーツ姿のおじいさんが椅子に座っていた


「うん。見た限りどこか悪いというわけではなさそうだね。では魂の召喚は成功したというわけだ。さて君もこちらに座ってお茶でも飲みながら今後について話合おうではないか」


見るからに人の良さそうな柔和な笑みを浮かべたおじいさんは俺が此方を向いたと分かるとその皺の深い顔をさらに笑みで深めにこやかにお茶を勧めてきた


ん?つかさっき魂の召喚がどうとか……


少し釈然としない感じを覚えながらもおじいさんの対面の席に座る

「大丈夫。ちゃんと全てを話すさ。しかしそう肩に力が入っていては信じるものも信じられないだろうしね」


まるで俺の思考が分かると言わんばかりのタイミングでティーカップが置かれた

湯気とともに鼻腔に広がる上品な香り
市販の紅茶しか飲んだことのない俺にも分かるほど上質な茶葉を使っているのだろう
その香りを嗅いだら幾分かリラックス出来ていた

そしてまた絶妙なタイミングでおじいさんが話かけてきた


「さて、本題に移ろうか。まず君は死んだ…これは自覚しているね?」


「はぁ…でも死んだと思ったらいきなりこの書斎のような部屋に寝ていて現在進行形でお茶をしていたら死んだ実感が沸きませんけど…」


「はっはっは!確かにそうだろうね。そして次にくる質問を予想しようかな?なぜここに喚ばれたか…私は誰なのか?って所かな?」


「はい…」


「まず私は君たちから見たところの神と呼ばれる存在だ。正解には観測者というのだがね」


「観測者?」


「うん。数多に存在する世界を観測し、時には世界を創る者さ」


「……もしかしてこの部屋にある書物って…」


「中々に聡明じゃないか。そう、君の推理どうりここに存在する書物は全ての世界を記した物だ」

「…貴方のことは分かりました。でも貴方が神だとしたら余計俺がここに喚ばれた理由が分からないんですが…」


「なに、丁度君が存在した世界を観測していたら君を見つけてね。一人の生命を救った空っぽだった君にご褒美をと思ったのさ」


「…それだけなんですか?」

正直驚いた。この人が人ではなくもっと上位の存在なのはなんとなくわかっていた。そうでもなければこの存在感を説明出来ないし
でもここに喚ばれた理由は少し納得出来ない

俺がいた世界を観測していたのなら俺よりここに喚ばれるにふさわしい人物がいたはずだ
俺はただ未来が見えない自分と未来が無限に広がっているあの子
どちらが生きるべきかを考えた結果あの子を選んだのだから

言うなれば自己満足であってただ理由をつけて生きることから逃げただけなのだ


「…俺はあの子を救ってなんかいない。ただ生きることから逃げるための理由にしたんです。そりゃあ世間から見れば俺はヒーローかもしれない…でも実際はあの子理由にして逃げた臆病者なんです!」


「…確かにそれを聞いたら誰も君をヒーローだなんて言わないだろうね。でもね?これを見てごらん?」


目の前にタブレット型のディスプレイが置かれる
そこには俺の家系のお墓の前で花を置く二十歳くらいの女性と腕に抱かれた赤ん坊が写っていた


「これは…あの親子ですか?」


「んー、惜しいかな?この女性の顔を良く見てごらん?」


言われた通り女性の顔をよく見てみる
最後にみた母親に見えるけど…少し違う?


「これはね?君が死んで二十年たった未来なんだ。そしてこの女性は君が助けたあの赤ん坊だよ」

これが…あの子?じゃあこの赤ん坊はこの子の子供ってことか


『お久しぶりです。もう私もお母さんになりました』


!?

「これは彼女のメッセージだよ。今の君に宛てたものじゃなく死んだ君に宛てた独り言のようなものだけどね」


『貴方が私たち親子を庇って撃たれてからもう二十年となりますが私たちは今も元気に生きています。この間産まれたこの子には勝手にですが貴方と同じ名前を付けさせてもらいました。貴方のような誰かを護れるような男の子になってくれるはずです』

馬鹿…俺はそんな凄い男じゃない…


『貴方のおかげで私はこうして幸せを掴むことが出来ました』

俺は感謝されるようなことを何一つしていない


『ごめんなさい。貴方の未来を犠牲にして』

違う!俺は君を理由に……!


『ありがとう。私に未来をくれて。貴方の分までこの生命を大事にします。…本当にありがとうございました。また来年も来ますね?』


そこで映像は途切れた

「彼女はね?毎年君の命日になると花を持ってお墓参りに来ているんだよ。…これでも君は自分を卑下にする?」


「…っ!出来るわけ…ない…!してしまったら彼女の思いまで蔑ろにしてしまう…」


「そうだね。わかってくれたなら嬉しいよ。自分を過小評価しないで?君のおかげで彼女は確かに救われた」


「………はいっ!」



抱えていたモヤモヤした気持ちが消えた感じがした











━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━はい!これでプロローグも終わりですね!次回は前半に転生と特典の話をして後半は転生してからの主人公を触りだけ入れてみようかと思います!こんな駄文を読んでくれてありがとうございます!コメントとかくれると嬉しいです!ではまた次回!

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