小説『Uninstall (ダブルエイチ)』
作者:月読 灰音(灰音ノ記憶)

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中3のときに教師が言っていたように
高1に上がる時点でたくさんの生徒が入ってきました

全寮制時代の生き残りは中等部、高等部合わせても僕だけになってしまったのです
全寮制廃止といっても寮利用者が大半で通学組は少数でした
そして女子禁制だった学校にも女子が入ってきました
新入生はけして優秀なわけではなく、話を聞くと皆金持ちの家の子ばかりでした

香川県の優秀な公立高校に行けなかったおバカちゃんたちが大金を払い
この学校に入ってきたというわけでした
教師もほぼ全面入れ替え。
中等部の時に世話になった先生は一人もいなくなったのでした

僕の勉強意欲は全く薄れ、成績もガタ落ちになっていきまいした
それでも学年トップはゆずらなかったけど、それはそれだけクラスメートたちの成績が悪かったということだろと思います
いつものように消灯が過ぎ、最後の見回りが終わると、ぼくはWCに行きタバコを取り出すとまた自室に戻りベランダで一服していました
寮の敷地を隔てる壁を乗り越える小さな黒い影がちらほら見えました
彼らが深夜徘徊で補導されないことを祈りながら煙草に火をつけました

その途端隣の部屋の明かりがつきベランダから寮監が飛び出してきて、僕の腕を抑えたのです
しばらくあっけにとられていましたが、ああ捕まったとぼんやり考えて
おそらくここで吸う最後になるであろう煙草を吸い続けました
寮監は一言も発せず、悲しそうな目で僕を見ていました

なにしろその寮監は前から僕が喫煙していることを知っていて、黙認してくれているいいおじさんだったから事情は大体分かったからです

おそらく書いた絵図はこうだろうと思います
学校組織が大きな改変をする際に過去の遺物の僕が目障りだった
しかしこれと言って辞めさす手立てもないまま高等部に僕は進学してしまった
お金のとれない特待生では利益がのぞめない

まあ大人の事情ってやつでしょう
確信したのは、その寮監しか僕がその時間に煙草を吸うことをしらないこと
それと寮監に連れられて会議室(という名の隔離法廷)に入った時には
すでに5人の教師がそろって談笑していたこと

一瞬のうちにそこまで頭が回りました

「あ?裁判ごっこの前にひとこといいですか?」

完全に教師をなめた口調で煽ってやりました

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