小説『Uninstall (ダブルエイチ)』
作者:月読 灰音(灰音ノ記憶)

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あるはずもない胸をまさぐられ
時には乳首をつねられながら、僕は父親に殴られているときのように
ココロをからっぽにして耐えた

痛みも悲しみも喜びも何もない真っ白な世界
時間だけが過ぎていく空間に思考を飛ばした

おじちゃんは僕の膝小僧をペロペロとなめて始めて
舐められている僕の姿も第三者が見ているように
僕には見えていた

せめてもの救いは、男の子だとばれていない様子だった

ひとしきりその汚い行為が終わり
おじちゃんはベルトを緩めてズボンを下ろした

知識としては知っていたので、これからそのおじちゃんが
何をしようとしているのかはすぐにわかった
怖くて仕方がなかった
ドラマのようにここで救世主が現れるなんてことはなかった


絶望

「お嬢ちゃんのお名前と小学校、一緒にいたお友達の名前を言いなさい
そうしたらこれ以上はなにもしないから」

見たこともないくらい大きな硬直した大人のペニスを握りしめながら
ニタニタ笑いのおじちゃんは猫なで声をだして聞いてきた

絶対言ってやるもんか
いつものように心を真っ白な世界に飛ばせば
なんだって耐えられる、そう思いギュッと目を閉じて耐えた

言ったところで、この男がその行為をやめないであろうことは
本能的に察知していたんだとおもう

「しょうがないなあ」

そういうとおじちゃんはニタニタ顔を今度は真っ赤に染めて
左手で僕のほっぺたを力任せに平手打ちしながら
右手でペニスを激しくしごき始めた

あまりの平手打ちの威力に座らされていた椅子からこけた僕に
今度は馬乗りになってまた平手打ちを加えながら
しごきつづけた

永遠とも思える長い時間が過ぎた後
「あ?」とも「う?」ともつかない声をうめきながら
絶頂を迎えたらしいおじちゃんは僕に見せつけるようにペニスを口元にもってきた

おじちゃんの顔面殴打で鼻血は止まらないし
口の中も切れて血の味しかしなかった

鼻血のせいで息もしにくくて口でしか息のできない僕の口に
おじちゃんはペニスをねじ込んだ

とても小学生の口に収まるようなものではなかった

息苦しさでもがくのと同時に膨れ上がったおじちゃんのペニスから
なにかが口の中にずるずると流れ込んできた
気持ちが悪くて吐きそうになった

「飲め」

おじちゃんの命令はさっきまでの熱っぽい声とは打って変わって
氷のような冷たさで耳に届いた
逆流した鼻血と、切れた口の血でもう血以外の味なんて何もしなかった

僕は人形
僕は人形
僕は人形
僕は人形
僕は人形

自分に言い聞かしながら血みどろの鉄の味しかしない痰のようなジェリーを飲み込んだ

ひとしきりの行為が終わるとおじさんはペニスと僕の顔を薄汚れた箱ティッシュで
ざっとふき取ると屑籠にそれを捨てて、自分のパンツとズボンを引き上げて履き直すと

「じゃあ、いっていいぞ。けど分かってんだろうな?なにがあったか誰かにチクったら今度はもっとひどい目に合わせて警察に付きだすぞ。」

といい放ち、僕をその小屋から追い出した

今考えるとこの男が僕にここまでしておいて警察になんか届けられるはずがないのに
その当時は恐怖と逃げ出したい一心で、うなずくと
一目散にアジト(たまり場をこうよんでた)にも寄らず
モデルルームみたいな嘘だらけの家に戻った

相変わらず誰もいない家でシャワーを使って体中をこすりまくって
それでも綺麗になった気がせず何度も洗い、歯磨きも繰り返し繰り返し何度もした

そうしてやっと布団にくるまったけど
一晩中涙が溢れて、恐怖と混ざって一睡もすることはできなかった

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