小説『Replay』
作者:カズィー()

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それから竜崎と会話をした。「今日」と同じ会話もあったが、そうでない会話もあった。
 そして国道へ出た。時間は同じ。薄暗い夕焼けが山の向こうで赤くなっている。車も通っている。道路の信号が赤くなる。横断歩道の信号が青くなる。通ろうとする竜崎を僕は背中をつかみ止めた。すると交差点から車が信号無視で突っ込んで来た。かするような勢いで竜崎を止めることが出来た。
「危ねぇぞ! お前ら!」
 車の運転手がそう言って、車は建物の陰に消えた。
(危ないのはどっちだ。こっちは一回親友をお前に殺されたんだ。)
そう思いながら消えていく車をにらんだ。「一回殺された」なんて生きている内に思ったり言ったりするとは。普通そんな言葉は言わないはずなんだけど。こんな現実か非現実か分からない現象が起きてる今は普通使わない様な言葉を何回も言えるだろうな。そんな事は今はどうでもいいか。
 とりあえず、竜崎は救われたはずだ。少なくともこれで死なない。
「おぉ。ありがとな。死ぬかと思ったぜ」
(死んでるんだっては一回)
「そうだね。危ないところだったね」
「恐ろしい反射神経だな。よく車が来るか分かったな」
「はは。力でもあるのかな。サイキック的な」
「マジか!? サイキック裕太なのか! そんな力があるなんて何で俺に言わなかったんだ!」
「いや、本気にされても困るんだけど。そんな訳ないでしょ」
「そうか。焦ったぜ。裕太がどこか遠くの世界へ行ってしまったのかと思ったぜ」
(遠くの世界へ行ったのは竜崎なんだよな……)
「ふぅ、じゃあな。また明日」
「あ、うん。バイバイ」
 竜崎の家はここからは僕の反対側だ。じゃあな。また明日、か。本当に何だったんだろうな。夢の中で今日をやり直すかなんて聞かれて。「今日」を過ごして。デジャ・ヴじゃあるまいし。そうなことを考えてると、背中の方から大きな音が聞こえる。この音は、急ブレーキの時の音?僕はハッとした。まさか、そんなはずは!
 急いで音のした方向へ走る。そこでとらえたのは竜崎の後ろ姿だった。気が抜けた。全力疾走していたせいでつまずきそうになった。一匹の猫が隣を走っていった。おそらくさっきのブレーキ音は猫を避けるためのブレーキのためだったのか。
 竜崎は僕に気づいていない。そのまま角に消えた。
(やっぱり大丈夫なんだよね)
 少々不安だけど、今の僕にはこれ以上は一緒に居ることはできない。竜崎の事だ。家の中で危ない目に遭うなんてゼロじゃないけどほぼ無いだろう。それほど信頼していたから。

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