「何だ?」
「あー…、あ、そう、明日の時間割を知りたくて」
「学年が違うのにか?」
(そうだったぁ。竜崎とは学年が違うんだった)
とっさに思いついた質問のため誤ってしまった。大丈夫か?と言うような顔で竜崎が見てくる。ここは突き通すしかない。
「あーうん。ちょっと気になって」
少し沈黙したが、そうか。と言い竜崎は一時間目からの説明を始めた。時間稼ぎのため、竜崎の話は頭には入らない。適当な相づちを打って会話を成り立たせる。
話が四時間目に差し掛かったとき、視界に男が入ってきた。
黒いコートと帽子をしている。今の季節だと特に不思議ではない格好だが、サングラスにマスクっていうのは怪しすぎる。まさかこんな「自分が犯人ですよ」とでも言うかのような格好で来るとは思わなかった。その男は僕たちを少し見たが、そのまま突き進み、角に消えた。
「…で、ホームルームだ」
「……」
「おい裕太。聞いてるのか?」
「え、あ、ごめん。何?」
「何って、お前が聞いてきたから言ってやったんだぞ?」
明日の時間割なんて今はどうでもいい。そもそも「明日」はもう、一回消えている。
おそらくさっきの男が通り魔だろう。時間的にも合いそうだ。
(これで第二の事故を回避できた…)