小説『Replay』
作者:カズィー()

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いないな。そう思った。
 今、竜崎はいつも僕と遊んでくれている。それが意図的なのか仕方なくなのかは分からないが、僕はそれが一番の楽しみだった。
「なぁ、お前さぁ」
「何?」
「俺が居なくても、……大丈夫だよな?」
「え?」
「あ、いや。……何でもない。お、おい。遅刻するぞ!」
 そう言って竜崎は走る。遅刻するような時間帯では無いけど……。にしても、俺が居なくても大丈夫だよな?どういう事だろう……。まさかどこかに行ってしまうのだろうか。 転校?就職?可能性はいくらでもあるのか。いずれそうなることが心配で言ったのか?でも僕は大して気にしなかった。竜崎なら居なくなると絶対に僕に何か言うはずだから、言わないということは大丈夫だろうと思ったからだ。
 ふぅ、と息を吐き僕も竜崎を追いかける。
「おーい! 待ってよー!」
 学校に着くまで竜崎と話しながら歩いた。学年が違うため教室が違うので入り口で別れた。授業は特に聞かなかった。聞かなくてもある程度できるから。それだけだった。休み時間も友達と適当に話した。クラスが変われば特に話もしないような、浅い関係の奴ばかりだった。竜崎のような「親友」と呼べる奴なんて他には居なかった。そんな普通な時間が毎日過ぎていく。ホームルームが終わり、ざわつく教室も次第に静かになっていく。僕も教室を出て学校を出る。そこには竜崎が居た。
「よう」
「竜崎、いつも待っててくれてありがとね」
「ふっ。当たり前だろ。お前の親だからな」
「いつからそうなったんだよ」
「えっ! 違うのか!」
「違う」
「即答でそう断言できる理由を言え」
「竜崎が親なら竜崎が一歳の時に僕を作ってる事になるから」
「いきなり少しエロいとこ突くな。もっと他にあると思うんだが」
「もっと他にあると思うんだったら初めから親ネタを出さないでよ」
「静かな空気よりマシだろ?」
「竜崎には、黙る。と自分は親です。って選択肢しか無いの?」
「無い」
「じゃあここで会話は終了だね」
(もちろんそんな気は無いけど……)
「そういえばな裕太。就職先決めてるのか?」
(あるんじゃないかやっぱり)
「まだ決めてないね」
「はぁ。先が思いやられるぜ。大丈夫なのかそんなので? 俺は死んでも死にきれないぜ全く! 成仏しないぞお前!」
「まだ当分死なないでしょ。っていうか竜崎は決めてるの?」
「聞かなくても分かるだろ?もちろん……」
(竜崎は何になるんだ……?)
「決めてない」
「……」
「……?」
 そんな感じで話は続くのだった。

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