小説『Replay』
作者:カズィー()

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「今日を……やり直す?」
 もちろん信じてはいない。ショックのあまり、めまいが起きてしまって夢の中に墜ちてしまったんだ。これは、竜崎の死を受け入れることのできない自分が作り出した逃げ道なんだ。
「そうだ。今日をやり直したいか」
 この声もそうだ。ノイズのかかった声。これは僕自身なんだ。この夢の中で僕は自分に問うんだ。今日をやり直すか、と。馬鹿馬鹿しかった。時間を戻すことなんてできない。 僕は自分にそんな非現実的な事を問い、「夢」という空間に逃げるのか。戻せない時間があるから人間は今を精一杯生きてるんだ。タイムマシンなんてアニメや映画の中だけにあるものだ。こんな自分の見せる夢になんて長くは居たくない。
「今日をやり直す事なんてできないんだ! できる訳がない!」
「もう一度問う。今日をやり直したいか」
「まだ言うのか! 無理なんだ!」
「質問に答えるんだ。今日をやり直したいのか」
「っ!」
 僕もしつこい奴だ。自分に腹が立った。話がまとまらない。僕はこんなにも弱く、自分の殻に閉じこもってこんな空間を作った。自分と言い合っていると思うと笑えてくる。竜崎の死で僕はおかしくなったのか?
「あぁ。やり直したいさ! 竜崎が死んだんだ! やり直したくない訳ないだろ! 今日をやり直せるなら何でもやるさ! でもそんな事出来ない! 出来ないんだよ!」
 涙が溢れた。自分の気持ちを叫ぶと、現実を叩きつけられる。竜崎は死んだ。やり直せない。その二言だけで僕の涙が止まらなかった。これでこの夢は覚めるのだろうか。本当の現実に僕は戻されるのだろうか。竜崎の居ない、現実の世界に。

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