小説『Replay』
作者:カズィー()

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「そうか。やり直したいか……。お前は出来ないと言ったな。なら……試してみるか?」
ノイズのかかった声がそう言った時。暗闇の向こうから閃光が広がり、僕を包んだ。



 目が覚める。暖かい。布団をかぶっている。自分の部屋に居て、僕はベットの中で寝ている。一瞬分からなかった。記憶を辿る。昨日は木曜日で、何事もなく学校を向かって、竜崎と話して、授業を受けて、そして帰り道。竜崎が死んだ。そして・・・僕の作る夢に墜ちた。そして閃光が僕を包んだ。そこまでは鮮明に覚えている。だからこそ、今自分が置かれている状況が理解出来なかった。おそらく、ショックで気を失った僕を両親が部屋まで運んだ。そんなとこだろう。あの両親が僕を運んだとは思えないけど……。
 僕はとりあえず時計を見た。
「えっ?」
 思わず声が漏れてしまった。それは時間のためじゃない。曜日に目がとまる。目をこすってもう一度見る。一瞬ぼやける目も、ピントが合わさりソレを見る。木曜日。確かにそう書かれている。そんなハズはない。昨日が木曜日なんだ。この時計は電波時計のため、人の手によって合わせることができない。そのため、より現実味を帯びない。今僕の前で起きている現象は、昨日も今日も木曜日だということだ。
「なんで……そんな馬鹿な」
僕はハッとした。夢の中の言葉。
「今日を……やり直したいか?」
 いや、でもそんなはずは無い。時間を戻すことなんてできないんだ。そう自分に言い聞かせた。でも、僕の目の前で起こっているのは現実だ。とても夢とは思えない。そんな感覚じゃない。これは現実なんだ。でも、そう思うことによって頭が混乱してくる。僕は真相を確かめるため、急いで服を着た。寒さなんて気にならない。興奮のため体が熱を帯びている。朝食を食べずに外へ出る。時間は、昨日と同じ。正確には昨日と言うべきなのか今日と言うべきなのか分からないが今はそんな事どうでもいい。良くは覚えて無いが、昨日と外へ出た時間は同じなはずだ。いつも同じ時間に出ているから分かる。ここからいつもと同じペースで歩く。校舎の前へ来た。「今日」をやり直してるならここで竜崎に声をかけられるはずだ。
「おっはよ?! 今日も良い天気だな!」
と。ふとそう思うと笑えた。自分は何に期待してるんだ。やはりそう思う。はぁ、と息を吐き立ち止まる。
「おっはよ?! 今日も良い天気だな!」
(え?竜崎?そんなはずは……。竜崎は死んだんだ。僕の目の前で。でもここで冷静さを無くして、竜崎じゃないか! って叫んだら今日を「今日」か確かめれない。確かここは……)
「おはよう竜崎。今日も朝から元気だね」
(だったよな)
「フッ。まぁな」
 そう言ってニヤける。同じだ。なら本当に時間が元に戻ったのか?あの夢の声の言ったことは現実になったって事なのか?現実を見せられてもまだ信じることが出来ない。当たり前だ。「時間が戻りました」なんて一区切りで済むものじゃ無い。どうしたら良いのだろう……。

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