小説『死神のシンフォニー【完結】』
作者:迷音ユウ(華雪‡マナのつぶやきごと)

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二次試験の内容発表後、照火と唯はまた3-Axの教室に戻っていた。唯の話によると、この部屋が照火たちのチームの控え室らしい。・・・それにしても。

「ねぇ、唯。何でこの部屋はしょっちゅう広さが変わるの?」

この部屋、さっき一次試験のときに使われていた部屋なのだが、広さがそのときの半分ぐらいになっている。最初(さっき)入ってきたときには一瞬部屋を間違えたと思ったがどうも違うらしい。

「あぁ、これ?これはね、全部、愛流ちゃんの『力』なんだよ」

「えっ!?」

愛流といえば、二次試験の内容発表のときに乱上をぶっ飛ばしたやつ。あの時には、何もない空間からでてきたり、消えたりした。どうやら死神には不思議な能力が備わっているらしい。

「すごいね!一人で!?どうやったの?」

そういうと、唯は愛流の力について説明してくれた。

「愛流ちゃんの力は、ズバリ、『夢現(リアリティビジョン)』。まぁ簡単に言えば、思ったこと考えたことを現実にする力なんだよ。し・か・も、その夢現の中でも死神の中で、唯一のレベル5なんだ!」

唯は自分のことを自慢するかのように、腰に手をあてていった。

それにしてもそんな『力』、うらやましい。

(僕にもそんな『力』があったらいいのに)

「ここの学校の管理主任も愛流ちゃんなんだよ」

「ねぇ、唯も何か『力』持ってるの?」

「ん私?私の『力』はね・・・。んーちょっとここでは見せれないかなぁ」

「・・・そんなこといって実際はないんじゃないの?」

照火はちょっと意地悪ぽく言った。すると唯は少し怒ったような感じで、
「そんなことないよ(怒)。私の力は『天気予言(ウェザーレポート)』、『神風(じんぷう)』、『聖癒(リカバリー)』。これでも死神の中でも一番多い、3つの力を持っているんだもん!まぁ天気予言も神風も基本、外で使う『力』だし・・・、聖癒も誰か怪我したときの力だから・・・今は見せられないんだよ。わかった?」

「ふーん」

照火は少し疑いながら話を変えた。

「School RPGっていうのはなに?」

まぁ大体名前から想像はついていたが一応訊いた。

「ほらゲームとかでよくあるじゃん、RPG(ロールプレイングゲーム)。あれだよ」

いやあれだよって言われても。照火の中ではRPGはモンスターとかを倒しながらストーリーを進めていくというイメージがあった。でも、Schoolというからにはここで行うのだろうが、何を倒すのだろうか。それとも単純にどこかまで向かうということなのだろうか?

「がんばってねSchool RPG。ここ数百回合格者1人もいないから」

「そっそんなに難しいの?そのRPG。どんなことをするの?」

照火は怖くなって訊いた。

「んーまぁ基本的にはほかのチームと戦ってもらうんだけど・・・。ん?これだとRPGぽくないぁ。名前かえてもらっとこ。えーっと・・・・。そうそうたまーにだけどドラゴンとか出るよ(笑)」

「――――――っ!ど、ど、ドラゴンってあのゲームとかでよく出てくるあれ?あの翼はえてて、口から火を吹くあれ?」

唯は何も言わなかったが、ニコニコという擬態語がよく当てはまるような笑顔が、全力で肯定していた。

(・・・。ドラゴンとかーー絶対しぬぅ。まぁもう死んでるけど・・・)

まぁドラゴンがいる(そんなこと)は信じたくないので、
「ははっ、そ、そんなドラゴンとかいるわけないじゃん(焦)」

すると唯はちっちっちっと指を振って、
「ほらぁ。照火忘れたの?愛流ちゃんのち・か・ら」

照火ははっとした。愛流とかいう死神の『力』は、たしか考えたこととかを現実化する力だったような気がする。現実にないものも現実化できるとしたら・・・。やっぱりうらやましい。

「いいなぁ死神は。魔法みたいな、超能力みたいなものが使えて」

そういいかけて照火は、一つ前の思考に戻る。

(ドラゴンが本当にいる・・・?爪、牙、炎・・・・死ぬ!)

「ちょ、ドラゴンだなんて・・・、むっ、無理だよ!帰る!」

そういって照火はドアに向かって走り出した。

「おーい。帰るってどこにだよぉーー」

口に手をあてながらそんなこと言ってる唯を無視して、ドアを開けようとした。が、ちょうどそのときドアが開いた。

「わっ!」
「きゃっ!」

照火はそのまま入ってこようとしていた女の子にぶつかってしまった。照火もその女の子もしりもちをついてしまった。

「イテテ・・・。わっ、ごっごめんなさい!」

(・・・ん?)

照火はあやまったときに相手の顔を見た。照火はその顔に見覚えがあった。一人の名前が頭の中に浮かんでくる。だがそれを頭をぶんぶん振ってとりはらう。あいつが絶対ここにいるはずがない。死んでいるはずがない。

するとその少女は顔を上げた。そして驚いたような顔をした。

「えっ・・・・。テル・・・・。テルだよね?何でこんなところにいるの?」


予想的中。

自分のことをテルと呼ぶのは一人しかいない。


照火の幼馴染、水神 雫だった。

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