小説『死神のシンフォニー【完結】』
作者:迷音ユウ(華雪‡マナのつぶやきごと)

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「テルが何でこんなところにいるの?」

雫は再び訊いてきた。

「―っ!やっぱり雫?そっちこそなんで・・・・・・」

ここにいるということ。それはつまり・・・。

「ここにいるってことは、雫は・・・」

「そうですよ。たしかに水神雫さんは8月9日に亡くなられました」

照火の言葉は一人の男の声に遮られた。誰の声かと思っていると、扉の陰から一人の金髪の死神が現れた。

照火は誰?と唯に目で問いかけてみる。だが唯はその男のほうをじっと睨んでいた。

「・・・・・・?」

照火も雫もなぜ、唯がなぜ睨んでいるのかが分からず、唯とその男の顔を交互に見る。

少しの間をおいて、その男は口を開いた。

「久しぶりですね。黒羽さん」

唯は依然睨みながら、
「なんで龍園、君がここにいるんだよ!!」
と、声を荒げていった。

照火達にはまったく状況がつかめない。

「何故って?そんな分かりきったことをどうして聞くんですか?」
龍園とかいう男は馬鹿にしているかのようないやな丁寧口調でしゃべる。
「私がここにいる水神さんの担当だからですよ」

龍園は鼻で笑う。

「だって君は!・・・・・・」
といいかけて唯はあっけにとられている照火に気づいて我に返った。

「まぁいいや。て、ここにいるってことは私たちのチームってこと?」

「まぁそういうことになりますね」
龍園はいやな笑みを浮かべる。


(・・・・・・、この二人何かあったのかな?)

まぁそれはさておき(さておいていいのか分からないが一応おいておく)、龍園はいま、雫が死んだといった。死んだというからには何か原因があるはずだ。一瞬、「何で死んじゃったの?」と問いかけたいという衝動に駆られた。しかし、照火はそれを必死に抑えた。雫のことを気遣ってのことだった。

だが、逆に雫はそんなことを気にする風もなく、
「ねぇ、照火もここにいるってことは死んだんだよね。・・・まさか・・・・・・自殺じゃないよね」

ライトのこともあるからそう訊いてきたのだろうが、結構直球に訊いてきた。まぁ雫は幼いころから無神経というか・・・、素直というか・・・、とにかくストレートにものを言う。

「んー。照火は自殺なんかじゃないよ?交通事故だよ?」

何でお前が言うんだよ。とか照火は思っていたが、唯のその言葉で雫はほっとしたような顔をして「よかった」と呟いていたので、特に唯にはつっこまなかった。

「私、何で死んじゃったか知ってる?まぁ知らないと思うけど」
雫は静かに口を開いた。

「テルは休んでいたから知らないと思うけど、8月9日に課外研修があったんだ。その帰りのバスでね・・・。バスガが事故っちゃって・・・」

事故か・・・、と照火は思った。自分の事故のときは痛みを感じる暇もなかった。即死とまではいかないが、痛みをほとんど感じなかった。しかし、バスの事故となるとそういうことはないだろう。痛かったに違いない。怖かったに違いない。


ガララ。また、ドアが開いた。


「おっ、次のチームメンバーかな?」

唯はまるで友達が来たときのようにはしゃいでドアに駆け寄った。照火はなんか気分が壊されたなと思いつつ、ドアのほうを見た。っとまた見覚えのある人物。誰だっけ・・・?と考えていると雫はポツリと言った。

「菫ちゃん?」

菫・・・?菫といえば・・・雫の一番の親友だったような気がする。

「えっ?雫?わっ!雫だ!会いたかったよぉ??」

そういって菫(?)は雫に飛びついた(抱きついた?)。

「雫が先に死んじゃって寂しかったよぉ?。って、そのあとすぐ私も死んだんだけど。とにかく会えてよかった??!」

何がいいかはあまり照火には理解できないが、二人が再開の喜びを分かち合ってることだけは理解できた。



そんなとき、

カツン。

足音がした。


ドアの外には最後のメンバーが来ていた。

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