小説『死神のシンフォニー【完結】』
作者:迷音ユウ(華雪‡マナのつぶやきごと)

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ドアが開く。みんなの視線がドアに向けられる。

「あぁっと、次の人かな?」

唯はまたドアのほうへパタパタと走っていった。

誰かが入ってくる。

その姿が見えたのか、見えていなかったのかはわからない。しかし照火はドアに向けていた視線を反射的にそらした。心のそこから、記憶の底から、今入ってきた人物とかかわることを拒絶している自分がいる。この感じは・・・。大体誰が入ってきたかは察しがついた。だが、照る火は確認のために、拒絶している体を何とか動かして、チラッとドアのほうを見た。

「・・・・・・」

やはりそこにいた。

不知火飛鳥。

照火の心を、体をさんざん痛めつけ、そしてライトを自殺に追いやった人物。だが、照火は彼の顔、姿を見て思った。生前(いつも)と何かが違うと。全体的になにか暗い。いつもより、感じる恐怖というか、なんだかよくわからないオーラみたいなものが少ない。しかし、感じるものは0ではないので、照火は一歩身を引く。『意識的』にではなく『反射的』に。

飛鳥はこっちのほうを見て、照火がいたことに少し驚いたような顔をした。だが、すぐその表情を戻し、こっちへ向かって歩き出した。

だんだん近づいてくる。

照火の前まで来た。照火は息を呑む。また『意味もなく』殴られてしまうのか・・・。

・・・だが、それはなかった。飛鳥は照火の前まで来て一瞬立ち止まりはしたものの、何もせずに通り過ぎた。そして教室の隅の席に無言で・・・、座った。

やはりなにかがおかしい。何もしないでいてくれるほうが照火にとってはとてもありがたいことなのだが、なにか拍子が抜けるというか・・・、違和感を感じる。気のせいかもしれないが。

唯は照火と飛鳥の無言のやり取りを見ていたが、飛鳥が座ったので待ってましたとばかりにしゃべりだした。

「よし、みんなそろったみたいだね。・・・ってあれ?そこの二人、担当は?」

たしかに、飛鳥と菫には誰も担当の死神がいない。ここにきてみている限りでは死人(ひと)一人につき死神一人、みたいだったが。

菫は辺りをきょろきょろと見回す。

「あれ?さっきまではいたのにおかしいな・・・」

と、そのとき、
「う、ゥワーン・・・やっと・・・やっとだどりつけたよぉ・・・、グスン」
ドアの外で泣き声が・・・。

ガララ。

「えぐ・・・ひっく・・・もう二度とたどり着けないとおもった・・・。グスン。よ、よかったー。愛流、あひはほー(ありがとー)」

入ってきたのはメガネをかけた、泣いている死神と、そいつにすがりつかれている愛流だった。どうやら迷って泣いていたらしい。

「アハハ。また洸(ほのか)ちゃん迷ってたの?相変わらずだな」

そういいながら唯は腹を抱えて笑った。

でも照火は思う。
(唯も迷ってたよね)

まぁとにかく、これで死人(ひと)四人、担当の死神四人で全員揃ったようだ。

今から何をするのだろうか・・・。

「よし、全員そろったから、RPGに備えて、『力』の覚醒をするよ?」

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