小説『死神のシンフォニー【完結】』
作者:迷音ユウ(華雪‡マナのつぶやきごと)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

「あっ忘れてた」

唯はポケットから何かを取り出した。見た限りでは腕時計のようなもの。

「はーい。みんなこれ腕につけて」

唯はその腕時計みたいなものを全員に配った。

「なに?これ」

照火たちは、それを腕に巻きながら訊いた。それには画面のようなものがついていた。だが時計ではないようだった。画面の横には三個ほどボタンがついている。ボタンには上から順にS、I/O、Rと書かれていた。

「みんな一番上のSって書いてあるボタンを押して。それが起動ボタンだから」

照火たちはそのボタンを押してみる。すると画面がパッとついた。この学校の地図らしきものが映し出されていた。中心に赤い丸。・・・これが自分だろう。周りには青い丸が三つ。多分これは雫たち。同じチームの人間だろう。唯たちを表すであろう丸はない。どうやら、死神たちは映らないらしい。それと画面の下に数字が書いてあった。はじめ見たときは3670となっていたが、少しずつ減っていた。

全員が画面をつけたところで洸が説明を始めた。

「それは見て分かるように、この学校の校舎の地図が表示されます。赤い丸が自分。青い丸がチームメンバー。まぁ私たちのように死人(ひと)ではないのは映らないんだけど・・・。白い丸は相手チーム。そんでもって下に文字が書かれてるでしょ?それが今の残りチーム。横のI/Oのボタンは地図のズームイン、ズームアウト。Rっていうボタンは二次試験をリタイアしたくなったら全員が押すとリタイアになります。ということで説明終わり!」

「ふーん」

飛鳥は興味なさそうな返事をして、その機械をいじくっていた。飛鳥はI/OボタンのOの側を押した。画面がズームアウトされ広い範囲が見えるようになる。すると画面の上のほう右端に黒い丸が映し出されていた。さっきの説明では黒い丸は言われていなかったはずだ。

「おい。この黒い丸は何だ?」

飛鳥はそういって自分の腕の機械をみんなに見せる。黒い丸はこっちのほうに近づいてきている。ゆっくりだが確実に。ついでに言うと上のほうにいた白い丸、要するに相手チームをその黒い丸は飲み込みながら進んでいく。それと同時に下のチーム数も減ってきている。

「あ、それは・・・」
と洸がいいかけたところで菫の声がさえぎった。

「ねぇなんか地響きしない?」

「地響き?」

照火たちは足元に、そして耳に集中する。


ドシン…ドシン…。ウワァァ!…ドシン…

確かに聞こえる。しかも途中に人の悲鳴が聞こえたような気がした。

ドシン・・・。

画面の中の黒い丸がどんどん近づいてくる。照火は分かった。それが何なのか・・・。愛流が放送で言ってた。架空生物に気をつけろと。

「ねぇ唯。もしかして。その黒い丸って・・・・・・・・・」

ドシン・・・。グガァァァァァァァ!!!

現れた。大きさはそれほどではない。しかしそれは確かに『あれ』だ。ゲームやアニメでたびたび姿を表す、架空の生き物。『ドラゴン』・・・


「あ・・・ぁ・・・」

「な・・・なに・・・これ・・・・・・」

誰一人として声が出ない。

ガルルルルル・・・。

ドラゴンがうなり始めた。ギラリと光る目でこっちを睨む。するとドラゴンははある動作をした。顔を少し上に向けて何かをためるような動作を。ゲームとかで見る、『炎』をはく予備動作・・・。

ドラゴンがためたものを吐き出そうと口をあけようとした。瞬間、照火は叫んだそして動いた。

「っ!危ないっ!!逃げろっ!!」

叫び照火達が走り出したほんの1秒にも満たない間の後、ドラゴンの口から摂氏4000度をも超える炎が吐き出された。

-21-
Copyright ©迷音ユウ All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える