幸希と望美が小学校四年生の時。十一月二十六日午後四時三十分。二人は学校が終わり家に帰っていた。
「ただいまー!」
二人は家の扉を開けた。そして、異変に気づいた。まず、いつもは返ってくるはずの「おかえり」という母親の声が聞こえない。
玄関の靴が荒れている。ついでにカーペットなどもぐちゃぐちゃになっている。
「?」
なにかがおかしい。
ガタン。
何か音が聞こえた。
誰かがいるようだ。
はじめは二人ともお母さんと思った。
でもどうやら違うようだ。
望美が「だれ?」と問いかけようとするのを幸希が手で制す。
息を殺して覗いてみる。
そこには知らない、覆面の二人組みの男がいた。
幸希は直感した。これはやばい・・・・・・と。
幸希と望美は静かに押入れに隠れた。
耳を澄ましてみる。男たちの足音は、その音の方向から察するに、窓から出て行った。車の音が聞こえ、出て行った。
そのあともしばらく押入れの中で様子を伺っていた。約二十分、それからやっと幸希と望美はと押入れから出た。
部屋は荒らされ、物が乱雑に散らばっていた。
母親はいない。どこだろう。母親の部屋に行ってみる。
いた。自分たちの母親が。いや、母親ではない。母親だが違う。母親といってはいけない。こんなの違う。それほどまでに無残な・・・・・・・・・。