照火は幸希の話を聞いて震えた。自分のことも飛鳥のこともひどいと思う。ただ照火は幸希の過去はそれを上回ると思った。
やっとの思いで口を開く。
「復讐って何をするんだよ・・・」
「もちろん・・・・・・殺すのさ・・・」
その言葉、『殺す』。照火はその言葉が苦手だ。
自分の家族は事故で死んだ。それは偶然。飛鳥の家族は自殺した。間接的に他人がかかわっているとはいえ、自分で『命』を絶った。自殺は自分の意思。
しかし、殺すのは相手の意思は何も関係なしにただ、死なせてしまう。
相手が悪者かもしれない。その相手を憎むのはよくわかる。が、しかし、相手の意思も関係なしに、しかも、必然的に死なせる。それは最悪の行為。
殺すなら理由があろうとなかろうと同じこと。それじゃ幸希もその強盗と同じこと。
「お前、人を勝手に死なせていいと思ってるのか!?相手が最悪な人間だとしても、生きてる人間を勝手に死なせるなんてありえない!」
ゴッ!!
刹那、照火の足元から照火を囲うかのように灼熱の炎が燃え上がる。
「――っ!!」
幸希は一歩身を引く。
「復讐したい気持ちはよくわかる。でも復讐したって何が変わるというんだよ!!復讐しても何も戻ってはこない!」
復讐、憎しみ。かつて照火の中にも少し芽生えた感情。ただいまはない。
「復讐(そんなこと)のために、お前の妹や僕の友達を勝手に死なせて・・・・・・・・・お前は絶対許さない!!」
さらに炎は強く照火をとり囲う。
ただ不思議と照火自身は熱く感じない。