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銃弾が照火に当たった。・・・・・・・・・いや、確かにあたったのだがおかしかった。照火に銃弾があたると同時に、照火の姿がぐらりと揺れた。そして、銃弾は照火に一切の傷を負わすことなく、照火の後ろのほうにあった壁にあたった。
「―っ!」
一番驚いたのはもちろん幸希だ。何が起こったのかまったく理解できていなかった。
まぁ、簡単に言えば、今幸希が撃ったのは虚像だ。空気が熱せられると光の屈折率が変わり、像が少しずれて見える。夏のとても暑いときに視界が揺らぐあれと一緒だ。ようは、幸希が撃った場所に照火はいない。もう少し横。
実際のところ、照火も何が起きたのかはあまり理解できていなかった。ただ、幸希が銃を外したのが見えただけ。
(今なら、いける・・・・・・)
『力』を自分の手に集中させる。残っている全体力、精神力をつぎ込んで。そして怒りを込めて。
「うぉぉぉぉぉぉ!」
どんどん火球は大きくなる。
(こ、これは・・・や・・・・・・ばい・・・)
幸希はここにきて始めて恐怖を感じた。火球はすでに直径2mを越している。
しかも、さらに大きくなる。
幸希は『力』を使おうとする。自分の身を防ぐために。しかし、頭が恐怖のせいで混乱していて、何をしたらいいのかよくわからない。
そして、
(む、無理・・・・・・勝て・・・・・・ない・・・)
照火は投げた。火球を。今まで溜まっていた『何か』を吐き出すように思いっきり投げた。
刹那、幸希は業火に飲まれた。