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照火は目を開けた。そこには幸希の姿はなかった。周りを見る。しかし誰もいなかった。
「・・・・・・・・・・・・」
自分は、幸希を殺してしまったのだろうか・・・。照火は俯いた。
「大丈夫だよ、照火。幸希は死んだんじゃないから」
この声は・・・。後ろを振り向く。そこには唯がいた。
「ゆ、唯・・・死んだんじゃないってどういう・・・」
「照火の『力』は発火現象だったよね。でも、最後に照火が使った『力』は発火現象じゃないんだよ。さっきのは、発火現象の二重の覚醒(デュアルエコー)、王の業火(パイロキング)」
「でゅある・・・・・・えこー?」
「そう、二重の覚醒(デュアルエコー)。まぁ、簡単にいえば『力』のランクアップだよ」
「そ、そう・・・。で、死んだんじゃないっていうのは?」
「王の業火は物を燃やすわけじゃないんだよ」
「?」
燃やすわけじゃない・・・、といっても火は火。物を燃やすことしかできないはず・・・。
「王の業火はね、人の心の悪い部分を消(もや)すんだよ。物理的に燃やすんじゃなくて、どっちかというと精神的かな」
「え、どういうこと?」
「要するに、幸希が消えたのは、未練であった復讐心が消えたからだよ。復讐心てのも心の悪だからね」
「・・・・・・・・・じゃあ殺したわけじゃあ」
「うん、殺したわけじゃないよ」
「よかった・・・」
ほっとした。一番気になったことだったから。安心したと同時に頭がくらっとした。ひざの力が抜けていく。
「あ、あれ?どうしたんだろ・・・」
めまいもしてきた。
「仕方ないよ、照火。だって、あれだけおっきな『力』使ったんだもん」
「あ・・・」
倒れる・・・。
ちょうどそのとき放送が聞こえてきた。
『二次試験を終了します。残ったチームは一チーム。一人。規定により三次試験を飛ばして最終・・・・・・』
照火の意識はそこで途切れた。