小説『死神のシンフォニー【完結】』
作者:迷音ユウ(華雪‡マナのつぶやきごと)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

-12

「もしもし、」

はじめ、電話の向こう側はザーッという音が流れていた。しかし、数秒たつとその音は次第に小さくなり、やがてぴたりととまった。そして、声が聞こえてきた。

『照火・・・、照火だよね。僕が誰だかわかる?』

「!?」

雷人だ、と照火は直感的に分かった。雷人の声は聞いたことがない。それは雷人が事故で喋られなくなってしまっていたからだ。でも、この声は絶対雷人だ、と断言できる自身が照火にはあった。


照火は何故?と問うように唯のほうを見た。唯の笑顔は変わっていなかった。

「雷人、雷人なの?なんで?」

『よかった。声聞いたことなくても分かってくれてうれしいよ。何で、って聞かれても・・・僕もよく分からないんだけど・・・。あ、そうだはじめにあやまらせてよ。ごめん』

照火はなぜ雷人があやまったのかすぐ意味を理解できなかった。

「なんで、雷人があやまるんだよ。雷人はなにも悪くないんだからさ。・・・・・・・・・そうだ、君に訊きたいことがあるんだ」

まぁ訊くことはもちろん最終試験のこと。

『知ってるよ、訊きたいことは』

「えっ?」

予想外の返事だった。

『ずっと照火がテスト受けるのを見てたから』

雷人はすべて知っているようだった。「そう・・・」と照火は小さくつぶやいた。

「ねぇ、雷人・・・。僕どうすればいいのかな」

『照火・・・・・・。僕はもう死んでるんだよ?いつまでもそんなんでどうするんだよ』

雷人は間髪いれずに答えた。それは照火にとっては意外な一言だった。

「だって・・・」

『照火・・・・・・。今までは僕も君も「友達」はお互いだけだった。でも今、君は違うんじゃないの?』

・・・・・・。

雷人は飛鳥のことを言ってるようだった。自分を苦しめた張本人なのに。

『僕は死んでる。でも照火たちにはまだチャンスがあるじゃんか。まだ生き返れる可能性があるじゃん。ねぇ、照火僕のことばっかりに執着・・・、というか僕のことで塞ぎこまないでよ。こっちが悲しくなってくる』

「・・・・・・」

『せっかく君は、「友達」を手に入れたんじゃないか。「仲間」を手に入れたんじゃないか。君が今、ここまで来たのはその仲間のおかげだよね、照火。僕の分まで長生きしてよ。ね?友達と一緒に楽しく過ごしてよ。それが僕の・・・・・・ぼくの・・・ザザッ・・・望み・・・・・・ザザザッ・・・だから・・・・・・』

ザザーーーーーッ。

三分。たった三分。短い時間のようだけど、長かったような感じもある。長さでは表せない時間だった。

照火は通話を切り、唯にそれを返した。

「どう、決まった?」

「うん、」

照火は強くうなずいた。もう迷わない。

「僕と一緒にがんばってきた三人を生き返らして!!」

照火の迷いは雷人の言葉ですべて消えていた。

そして一つ、目標ができた。まぁ、目標というかこれからどうしたいかだが。

(もっと生きたい。強く生きたい。雷人のためにも・・・)

-42-
Copyright ©迷音ユウ All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える