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「もしもし、」
はじめ、電話の向こう側はザーッという音が流れていた。しかし、数秒たつとその音は次第に小さくなり、やがてぴたりととまった。そして、声が聞こえてきた。
『照火・・・、照火だよね。僕が誰だかわかる?』
「!?」
雷人だ、と照火は直感的に分かった。雷人の声は聞いたことがない。それは雷人が事故で喋られなくなってしまっていたからだ。でも、この声は絶対雷人だ、と断言できる自身が照火にはあった。
照火は何故?と問うように唯のほうを見た。唯の笑顔は変わっていなかった。
「雷人、雷人なの?なんで?」
『よかった。声聞いたことなくても分かってくれてうれしいよ。何で、って聞かれても・・・僕もよく分からないんだけど・・・。あ、そうだはじめにあやまらせてよ。ごめん』
照火はなぜ雷人があやまったのかすぐ意味を理解できなかった。
「なんで、雷人があやまるんだよ。雷人はなにも悪くないんだからさ。・・・・・・・・・そうだ、君に訊きたいことがあるんだ」
まぁ訊くことはもちろん最終試験のこと。
『知ってるよ、訊きたいことは』
「えっ?」
予想外の返事だった。
『ずっと照火がテスト受けるのを見てたから』
雷人はすべて知っているようだった。「そう・・・」と照火は小さくつぶやいた。
「ねぇ、雷人・・・。僕どうすればいいのかな」
『照火・・・・・・。僕はもう死んでるんだよ?いつまでもそんなんでどうするんだよ』
雷人は間髪いれずに答えた。それは照火にとっては意外な一言だった。
「だって・・・」
『照火・・・・・・。今までは僕も君も「友達」はお互いだけだった。でも今、君は違うんじゃないの?』
・・・・・・。
雷人は飛鳥のことを言ってるようだった。自分を苦しめた張本人なのに。
『僕は死んでる。でも照火たちにはまだチャンスがあるじゃんか。まだ生き返れる可能性があるじゃん。ねぇ、照火僕のことばっかりに執着・・・、というか僕のことで塞ぎこまないでよ。こっちが悲しくなってくる』
「・・・・・・」
『せっかく君は、「友達」を手に入れたんじゃないか。「仲間」を手に入れたんじゃないか。君が今、ここまで来たのはその仲間のおかげだよね、照火。僕の分まで長生きしてよ。ね?友達と一緒に楽しく過ごしてよ。それが僕の・・・・・・ぼくの・・・ザザッ・・・望み・・・・・・ザザザッ・・・だから・・・・・・』
ザザーーーーーッ。
三分。たった三分。短い時間のようだけど、長かったような感じもある。長さでは表せない時間だった。
照火は通話を切り、唯にそれを返した。
「どう、決まった?」
「うん、」
照火は強くうなずいた。もう迷わない。
「僕と一緒にがんばってきた三人を生き返らして!!」
照火の迷いは雷人の言葉ですべて消えていた。
そして一つ、目標ができた。まぁ、目標というかこれからどうしたいかだが。
(もっと生きたい。強く生きたい。雷人のためにも・・・)