エピローグ
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―――気がつくと照火は屋上に雨の中突っ立っていた。見覚えがある風景。ここは自分が飛び降りた場所。
・・・・・・、帰ってきたんだ。生き返ったんだ。
◆ ◆ ◆ ◆
―――飛鳥ははっとなった。
ここは・・・?飛鳥は首を少し回し、まわりを見る。・・・どうやらバスの中のようだった。
(あのときの・・・、バス・・・なのか?)
周りにはクラスメイトがいた。やはりここは、あのときのバスの中だ。ふと、斜め前を見た。そこには雫と菫がいた。二人で向き合って、何か喜び合っている。
それにしても、なぜ自分はここにいるのだろう。自分はあの御影とかいうやつに変なことをされた。そしてそれからは・・・、何があったか覚えていない。今までのことは夢だったのかな、と一瞬思ったが、やはりあれが夢とは思えない。あれはたしかに現実だった。自分はたしかに一度死に、地獄へ行った。
でも自分は今、ここに『生き返って』いる。
飛鳥にはわかった
―――照火、お前がやってくれたのか。
飛鳥は閉じていたカーテンを開け、窓の外を見る。例の交差点に近づいていた。バスのスピードは落ち、ゆっくりと・・・・・・、止まった。
◆ ◆ ◆ ◆
少年はいつの間にか、車の中で眠っていた。車が道の凹凸でがたっと揺れた。その振動で、少年は目を覚ました。
「あれ、いつの間に眠ってたんだろ・・・」
「幸希、起きたの?ぐっすり眠ってたんだよ」
「・・・・・・・・・」
いつぐらいから寝ていたのだろう。もちろん自分でそんなことわかるはずもない。でも、おかしいことが一つだけある。
幸希は今、『復讐』をするために、叔父のトラックに乗せてもらって、ある場所に向かっていた。もちろん、何のためかなどは叔父には言っていない。母親を奪った相手に復讐しに行くなんていえるはずもない。そう、復讐しに行くのだが・・・。だけど、なんでだろう・・・・・・・・・。
完全に幸希の中から復讐心というものが消えていた。
「幸希、どうしたの?」
望美が考え込んでる幸希の顔を覗き込んだ。
「いや・・・、今寝て起きて思ったんだ・・・・。何で復讐しにいこうと思ってたんだっけ、って」
「・・・・・・・・・」
「復讐なんて何の意味もないのに、何で復讐しようと思ってたんだろう。戻ってこないのに」
望美はその言葉を聞いてほっとした。望美は復讐なんてしなくてもいいと思っていたから。復讐なんて意味がないものとわかっていたから。大切なのは、いまと未来だということを知っていたから。でも、望美は幸希をとめる自信がなかった。だからこそ、いまの言葉を聞いてほっとした。
「幸希・・・・・・、降りようよ」
まだ車は家からそう遠くない場所を走っていた。まぁ時間はかかるだろうが歩いて帰ることができる。
幸希は外を見た。ちょうど交差点だった。横にはバスが見えた。
「そうだね・・・・・・。叔父さん・・・、ここで降りるからとめてよ・・・・・・・・・」