小説『Fate/Zero これは戦争ですか? いいえ観光です』
作者:銃剣()

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番外話 誰にだって悩みの一つはある 後編

屋台で飲んでいた善明、ロア、子ギルの三人
そしてロアは悲しそうな目で自分の過去を語っていた


「俺さぁ転生して色んな事やったわけよ。でもさぁ段々自分が自分でいられなくなっちゃって」


「あぁ?どういう事だよ」


「悪さして真祖に殺されて転生して、また悪さして殺されて転生しての繰り返し・・・もう疲れてきたんだよ」


ロアはおでんの大根を食べ、酒を飲む
空になったコップを強く置く。そして、疲れ切った顔をする


「そうしている内に真祖に狙われる羽目になった。言わば俺は死徒のブラックリストにのっちまった」


「ブラックリストってどれだけ悪さしたんですか」


「悪さってか吸血なんだがな。あれだよ、死徒の本能的な」


子ギルの質問を返すロア
そして空のコップに酒を入れる、そして一気に飲み干す


「んっんっだぁ〜!・・・でもなぁ、俺だって一応は生きているんだぞ。吸血なんか運命的なものじゃん!真祖だって言い換えれば吸血鬼だよなぁ!アイツだって影でコソコソ血吸ってると思うぞ俺は!こっちは生まれてこの先地道に頑張ってきたんだ!死徒二十七祖に成るのも結構大変でさぁ、吸血するにも時間がなかったよ!受験生にとって一番大切な時期に差し掛かる所だったんだよ!そこ邪魔すんじゃねぇよ、空気読めよ真祖よぉ!!」


「怒り過ぎだよ、どんだけ真祖の事恨んでるんだよ」


善明は酒を飲みながらもロアの話を聞いていた
ロアの怒りに若干引いている所もある


「まぁそれはまだいいよ。俺だって無限に転生出来るからそんな事で怒りはしないよ。でも女に転生した時はダメだと思ったよ。アレだよ!俺の心の中で何か大切な物を失いかけたんだぞ!カッコいい事言って血を吸って何とか誤魔化したけどさぁ、やっぱり耐えられなかったよ!毎晩毎晩枕を涙で濡らしたよ!泣き過ぎて流血したわぁ!こちとら痛い思いしてんのにこんな仕打ちあるか普通!」


「人生なんてそんなものですよ。時には不運の連続だってあるんですから。現にとある槍兵だって運ないですから」


「そう言う事だ。お前がそんなに追い詰める必要ないんじゃないか?」


「うぅ・・・俺こんなに優しくされたの初めてだよ。お前らは本当にいい奴らだな・・・うぅぅぅぅ」


ロアは顔を伏せて泣き始めた
もはやその姿は現実に厳しさに耐えられなくなった中年のおっさんのようだった


「飲み過ぎだって、これから戦いに行くんだろ。俺達も見守ってやるからさ」


「陰ながら応援しますよ。頑張って下さい」


善明はロアの背中を叩きながら励まし、子ギルも少しながら応援している
ロアは顔を上げ、何かを決意した顔をして席を立つ


「そう言われると、引き下がるわけには行かないな・・・見とけ!これがアカシャの蛇と言われた俺の実力をよぉ!」


ロアは屋台をあとにして、戦う準備をし始める
善明も子ギルもそれを見守る


「お客さん、悪いんだけどお勘定」


「おいロア、金」


「あぁ、すま・・・来たか」


ロアは学校の外に誰かいるのを察知した











ザン!


「・・・・・・・・・・・・・・」


学校に現れたのは、真祖の執行者アルクェイド・ブリュンスタッド
彼女の目的はロアを殺す事
そして彼女の上を向いていた。その視線にはロア・・・姿を確認したのか、一歩ずつ歩き始める


「私の城へようこそ、アルクェイド・ブリュンスタッド--------白き姫」


「・・・・・・・・・・・・・・」


ロアは笑いながら話すが彼女は何も言わない
いや話したくないのかもしれない


「どうした?この土地に来てからずいぶんと言葉を紡いんでいたようだが、再開の挨拶はないなのか?」


「・・・・・・・・・・・・・・」


ロアは話を続けるが、それでも彼女は無言
未だに歩き続ける


「まぁいい。今宵は君が真円を書く素晴らしい夜だ。少しは私のもてなしにも付合って・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・うん?」


ロアが突然話すのをやめた。さすがにこれには彼女も反応する
そして彼女はロアを見た。そして彼は顔を青くし、小刻みに体が震えていた


「つ、付き・・・合って・・・くれると、嬉し・・いうっぷ!」


ロアは口を手で押さえる
体の小刻みな震えは次第に大きくなり、頬が膨らんでいた


「おろろろろろろろろろろろろろろろ!!」


「オイィィィィィ!何一番大事な所で吐いてんだよ!」


「もう台無しですよ!」


彼女に背を向け、四つん這いになって吐いた
この光景を近くで見ていた善明と子ギルは側に寄った


「す、すまん・・・飲み過ぎたようだ、うっぷ」


「お前マジで勘弁しろよぉ!こんな状況下で吐いてる方がおろろろろろろろろろろろ!!」


「って善明さんも吐いてるじゃないですか!何やっておろろろろろろろろろろろろろ!!」


「そういうお前らも吐いてんじゃないか!人の事言えないだおろろろろろろろろろろ!!」


ロアに文句を言う善明だったが、飲み過ぎは善明も同じだったため途中で吐いた
子ギルは善明にツッコミをするが途中で貰いゲロ
ロアはそんな二人を見てツッコムがまだ酒が残っていたので吐いていた


「「「おろろろろろろろろろろろろ!!」」」


三人の嘔吐は約十分ぐらい続いた











「いやぁ・・・もう・・・なんかごめん」


「ホント何やってんのダメ吸血鬼。お前のせいで色々無駄になったわ」


「まさかこの姿で吐くなんて、人生初ですよ」


「・・・所で何で屋台?」


あの後色々ぐだぐだになり、とりあえず飲み直す事にした
アルクェイドも一緒に飲む事になった


「なんかロアを殺す事がバカらしくなってきたわ」


「こんなバカ殺しても何の得もないからな」


「女性の前で吐く男なんてクズ以下ですよ」


「お前ら本人の目の前でそこまで言うか!!」


三人の毒舌にキレながらツッコミをするロア
アルクェイドは善明の事をずっと見ていた


「あぁ?どうした、何か言いたそうな顔してんな」


「・・・松村善明よね」


「何で名前知ってんだよ?」


「聞いたのよ、ゼル爺から」


善明は軽く眉を動かし、自分の酒を飲む
少ししてからアルクェイドに話しかけた


「ゼル爺ってあの爺さんか・・・なんか言ってた?」


「怒っていたわよ。早く貸した金返せって」


「善明さん、またお金借りたんですか」


「仕方ないだろぁ、俺ぁ全ての財産を銀の玉に持ってかれたんだからよぉ」


「それはただのパチンコでしょ」


子ギルは少し呆れた顔をしながら善明を見る
善明はパチンコをしてほとんど金が無くなり、よく誰かに金を借りている


「とりあえずロアの事なんだが、英霊の座又は屋台でバイトさせる事にしたから」


「ちょっと待て!俺そんな事聞いてないぞ!」


「だって今決めたもん。お前もそれでいいか?」


「・・・別にいいわよ。それ以来何もしないなら」


「大丈夫だ、バイト中は如何なることでも血を吸わせないから・・・年中」


「おい!今年中って言葉聞こえたぞ!俺を餓死させるつもりか!?」


「とりあえずボッシュートって事で」


善明はiPadを操作する
するとロアの座っている席の下から穴が開く


「え?ちょ!?ああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!!!!」


ロアはすぐに穴から落ち、叫びが聞こえなくなった所で穴は閉じた
善明はiPadを仕舞い、おでんを食べる


「随分酷い事しますね」


「子ギル・・・世の中はそんなもんだからな」 もぐもぐ


「星から教えてもらったけど・・・ここまでやるなんてね」


その後楽しく飲んでいた善明、アルクェイド、子ギルの三人
しばらくして志貴とシエルが来たが、ロアがいない事と学校に屋台という意味不明な状況に混乱していたが三人と混ざって宴会になった














「そんじゃま、俺達は行くわ」


「早く帰らないと大変ですので」


屋台での宴会が終わり、善明と子ギルは帰ろうとした。その帰りを見送るアルクエィド、シエル、志貴
すると何か思い詰めた志貴は善明にある事を聞く


「なぁ善明さん」


「ん?どした志貴」


「善明さんは・・・何者なんだ?」


志貴の質問に首を傾げる善明
何の事を言っているか、さっぱり分からなかった


「どういう意味だぁ?」


「志貴、どうしたの?」


そして志貴はある事実を話した


「善明さん、あんたからは線が見えない。いや、無いんだ」


志貴の言葉にアルクェイドとシエルは驚愕する
直死の魔眼・・・所有者にとって「死」は黒い線と点で視認され、強度を持たない。魔眼所有者がこの「死」を切ったり突くと、対象を殺すことができる


志貴は宴会中に善明に背中を叩かれて、メガネを落としてしまった
志貴のメガネは魔眼殺しと呼ばれるもので特殊な眼の能力をかき消す事が出来る
メガネを掛ける前に志貴は魔眼で善明の姿を一度見た。そこで志貴は驚いた。周りには線や点が見てるのに善明には見えなかった


「もう一度聞きたい・・・善明さん、あんたは何者なんだ?」


志貴はもう一度善明に同じ質問をする
善明はダルそうにしながら頭を掻く


「俺が何者か・・・そうだな」


答えが決まったのか
憎たらしい笑顔をしながら答えた


「宇宙一バカな転生者だコノヤロー」 ニヤァ


それを答えた後、善明と子ギルは背を向けて帰っていった
















「宇宙一バカな転生者・・・・・か」


志貴は善明の言葉を言いだし、クスッと笑った
その後夜空を見上げた


「何だよ・・・答えになっていないじゃないか」


だが志貴の顔は何故かスッキリしていた

















一方間桐家では


「おい善明。肉まんはどうした?」


「あ〜いや〜それがその・・・売り切れで」


「・・・・・|約束された(エクス)


「待てェェェェェェ!!ダメだって!こんな所で宝具使っちゃ!」


「|勝利の剣(カリバー)!!!」


「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


いつもと変わらないオチだった

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